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2013年 5月23日

風力発電はどうなってしまったのか
〈風力発電が普及しないワケ〉 

(上)政府の政策誘導に問題大

 環境省の調査によれば、風力発電には北海道だけで基幹エネルギーになり得るほどの潜在能力がある。近くに民家があるなどの社会的な制約や電力会社の送電可能量を勘案して割り引いても、全国で約6000万キロワット(kW)分は発電できるという。

▼「FITでも増えない」

 ところが、昨年度新たに導入された風力の発電量は3・7万kW(今年1月末時点)に過ぎず、太陽光が原発1基分に当たる100万kWを超えたのと比べても差は著しい。この間、再生可能エネルギーの普及をめざし、固定価格買い取り制度(FIT)が始まったにもかかわらずだ。同制度を始める時、経産省の担当者が「再生エネの第2のエース」と目した風力はどうなってしまったのか。

 風力発電に携わる事業者でつくる日本風力発電協会の斉藤哲夫企画局長は、自然エネルギー財団主催のメディア懇話会で意外な発言をした。

 「FITが入ってもすぐに増えないのは分かっていました」

 というのも、政府が2009年をもって新規建設への補助金をなくしたために、FIT開始までの公的支援がなくなり、各地で事業計画が滞ってしまったというのだ。風力の場合、発電に適した所を探す立地調査をはじめとする計画づくりから、実際に風車が回り始めるまでに5~9年はかかる。関係者からは「FIT開始後は計画が出続けており、早ければ2015年以降に発電量が増える」との見方も聞かれる。

▼アセス長期化足かせ

 ただ、それだけでは足りない。本当に普及させたいならば、再生エネを推進する立場にある行政がもたらす問題こそ、解決すべきだろう。前述の5~9年という期間の長さは、行政の環境影響評価(アセスメント)によるところが大きいからだ。

 風力発電は昨年10月からアセス対象となったが、同じ発電所について国と都道府県が別々に審査会を開くなど不効率で、住民への意見聴取などを合わせると3~4年かかるという。こうしたアセスの長期化は建設コストを以前よりも1億円程度増やし、事業者が参入に尻込みする原因をつくっている。風力発電協会によると、国と自治体の手続きを同時並行すれば7カ月程度まで短縮可能だ。

▼農地規制、送電網も不足

 田んぼや牧草地に風車が並ぶ景色は世界でも珍しくないが、日本では今、第一種農地(おおむね20ヘクタール以上の広大な農地)に新設できない。農地法の施行規則が「相当な理由がある場合」を除き、転用を認めていないからだ。だが、風車を置くのに必要な面積は約1ヘクタールで、並べて設けるにも数百メートルの間隔を取らなければならない。風車があっても農業は続けられるのだ。

 そして、風力による電気を国内全体で使うならば、北海道の恵まれた潜在能力を生かさない手はない。ただし、やたらに風車を置いても、北海道電力が本州へ送れる能力は60万kWとされ、これを充実させるには風車よりも莫大なカネがいる。しかも、送電線を敷くのは電力会社に一義的責任があっても、北海道電がエリア内の電力需要を十分賄えている中、着手するメリットはまずない。

▼「国は長期目標立てよ」

 風力発電協会の斉藤氏は「だからこそ、国が中長期にわたる再生エネの導入目標を立てなければならない」と、積極的な政策誘導を強く求める。協会は「2050年までに5000万kW」という目標を掲げているが、国はそうした数字を示していない。

 きちんとした目標があれば、それに向けて送電網充実に予算が回るだろう。もし、発電と送電部門を併せ持つ、今の電力会社の体制が差し支えの一因であることが明らかになれば、発送電分離を行って新組織の下で整備を進めようという機運も高まるはずだ。

〈メモ〉 発送電分離の時期 

 政府は「2015年に関連法案提出をめざし、18~20年をめどに実施する」などとした電力制度の改革スケジュールを閣議決定。だが、原案にあった「15年提出」は、電力業界やその支援を受ける自民党議員の抵抗を受けて「めざす」に後退。実現は早くも暗雲が立ち込めている。
                       

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