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2013年 6月17日

巨額の国費に群がる暴力団
問題だらけの福島除染労働(上)

作業員の口封じ、利益むさぼる  

 除染労働で見過ごせない問題が、累計1兆円超の巨額の国家予算に群がる暴力団の存在だ。暴力で作業員や下請け業者の口を封じ、不当な利益を手にしている。国を挙げた対策が求められる。

▼犯罪まん延、警察は後手

 除染作業をめぐる不祥事や事件が相次いでいる。「手抜き除染」に加え、内部告発した2次下請け作業員への不当解雇、住吉会系暴力団員による違法派遣(無許可派遣)も摘発された。さらに、5月には福島県内で除染業者が連れ去られる事件が発生。その後、加害者(作業関係者)は傷害、被害者は覚せい剤取締法違反の容疑でともに逮捕されている。

 福島県労連・労働相談センターの小川英雄所長はこれまで受けてきた約200件の相談から、「氷山の一角。暴力団が相当まん延している」とみる。

 相談では「賃金が4カ月間支払われていないので請求したら、暴力団風の人間にすごまれて書類(請求しないとの念書か)に押印させられた。旅館に押し込められ連絡が取れない」「内部告発したら会社名が特定され、やくざから『今度告発したら殺す』と言われた」と、暴力団の関与を指摘する内容が続く。

 環境省によると、除染事業の予算は現在までに1兆円超。ここに暴力団が群がり、対策が施されていないのが現状だ。

 国会でも議論された。石原伸晃環境相は5月9日、暴力団がはびこる現状を指摘した市田忠義参院議員(共産)の質問に対し、「撲滅するための努力をしなければならない」と強い言葉で対応を約束した。

 しかし、「警察の対応は後手に回りがち」と小川所長は嘆く。除染作業員が監禁されたとの相談では、作業員の妻の訴えに警察がまともに対応せず、その後何者かに自宅の窓ガラスが割られた。通報したことへの報復とみられる。
 また、内部告発した人の情報を、国の省庁が当該の会社に漏らすという不手際も明らかになっている。

▼生活困窮者を食い物に

 暴力団は中間搾取(ピンはね)と密接に関わっている。実際は支払ってもいない危険手当を「受け取った」と念書に書かせるなど、やり方は単純で乱暴だ。

 賃金不払いもある。「息子が41日間除染をやった。50万円が不払い。(息子が)『自分が帰って来ない時は警察に行ってくれ』と話すなど、暴力団が関わっているようなので労基署には申告できない」(楢葉町)という母親からの悲痛な相談も寄せられている。

 暴力団は県外から来る者も多い。作業員も全国各地から集まっていると見られ、失業など事情を抱えた人が目に付くという。暴力団が生活に困窮する人を集め、働き手を確保しながら、食い物にしているという構図が浮かぶ。
 小川所長は「警察の機敏な対応をはじめ、国を挙げた対策が必要。住民のための除染か、大手ゼネコンや暴力団のための除染なのかが問われている」と力を込める。県労連は6月27日に改めて「除染労働者110番」を一斉に行う予定だ。

▼「県民のための除染を」

 一方、前近代的な労働環境を改善しようと、さまざまな工夫も行われている。

 その一つ、福島県二本松市では除染事業を、地元業者でつくる協同組合に全て発注している。大手ゼネコンによる中間搾取をなくすのが狙いだが、市外の見ず知らずの暴力団の参入も防ぐ。作業は順調で、県労連などによると、12年度の進ちょく率は県内平均の倍の水準だという。次号「番外編」で詳報する。

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