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危険手当不払いがまん延 |
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ピンはね常態化、規制もなく |
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東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能汚染を減らす除染作業で、環境省が発注要件に定めている「危険手当(1万円)」の不払いがまん延している。中間搾取(ピンはね)への規制がないためだ。健康への影響が心配される作業で、復興のための肝いりの国家事業であるのに、労働環境は多くの問題を抱えている。(2回連載) ▼中間搾取が横行 「『危険手当をもらっていることにしてくれ』と言われた。1500人ほど働いているのに便所がなく、宅地の周りで用を足している」(作業地・楢葉町) 「日給1万6000円の約束が交通費と車の維持費用などを差し引かれ1万1000円に」(同) 「普通のマスクを使っている。フィルター付きのマスクにしてほしい」(南相馬市) 「ハローワーク近くで業者に勧誘され1カ月働いた。給料日前日に『健康診断をする』と東京に連れて行かれ、放り出された」(郡山市) 福島県労連の「除染労働者110番」には目を疑うような相談が寄せられている。特に多いのが賃金に関する訴えだ。 除染事業を発注する環境省は、福島第一原発から20キロ圏内と、年間積算被ばく線量が20ミリシーベルトを超える恐れがある地域について、通常の賃金に加えて1万円の「危険手当」の支給を発注要件としている。公共工事の積算に用いる国の設計労務単価では、除染作業に準用される作業は昨年度まで日給1万1700円(今年度から1万5000円)。これに危険手当を加えた2万1700円が元請けに支払われていたはずだが、末端の下請けの労働者にたどり着くまでにピンはねされている。 食事代や布団使用料などの「経費」名目で、手取り額が大幅に減らされたとの相談も多く、健康診断費用を天引きしたケースも。健康保険や雇用保険の加入割合の低さも際立つ。被ばく量がきちんと記録されないなど、安全上の不備も見過ごせない。 ▼国の対応、不十分 放射性物質に触れる仕事なのに、国が定める「危険手当」が支払われないということはあってはならない。しかし、「国の対応は全く不十分」と同県労連・労働相談センターの小川英雄所長は指摘する。 田村市では昨年末、労働基準監督署が除染業者に対し、危険手当の支給を一斉に指導した。しかし、効果はなく、例えばそれまで1万5500円の日給を支払っていた業者が、総額を変えないまま内訳を「日給5500円、除染手当1万円」に書き直すケースが続出した。福島県の法定最低賃金は時給664円。8時間労働に換算すると5312円で、最賃の範囲内だ。 小川所長は「労基署が入れ知恵したのではないか。環境省も、現場の実情を調べようともせず、あろうことか元請けのゼネコンに調べさせている。泥棒が子分に『盗んだのか』と聞くようなもの」と対応のまずさを指摘する。 ▼労働者の処遇確保が急務 ピンはねがまん延する背景には、建設業や原発労働に特有の「多重下請け構造」がある。常用労働者の雇用を極力避け、必要に応じて働き手を確保する仕組み。下請けが幾重にも連なり、各段階で発注者がマージン(利益)を抜く。 環境省は元請けについては指導できるが、その先の下請けについては「民間同士の契約であるため立ち入れない」という立場。国土交通省も、国の設計労務単価を今年度から大幅に引き上げたが、「下請けの賃金を拘束するものではない」とするなど、賃金の底上げには及び腰だ。 下請けや現場で働く労働者の処遇を守るルール作りが急務となっている。(つづく) |
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