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デフレ脱却へ底上げは不可欠 |
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〈2013年全労連春闘の勘所〉小田川義和事務局長 |
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全労連は2013国民春闘でデフレ脱却へ賃上げと雇用拡大などを求める方針を掲げた。その狙いについて小田川義和事務局長に話を聞いた。 ○ ――「アベノミクス」との関係で世間では賃上げが話題になっている デフレ不況の克服が必要だという意識は、政府、財界、労働組合、国民の間で共通している。しかし、同じ山をめざすとしても、そこに至る道筋は政府とわれわれとでは違う。勘所は賃上げだ。物価上昇を目標におくのなら賃上げを同時に、というのは当然であり、支持もある。この流れを追い風にしたい。 ――労使でどんな賃上げ交渉になるのか? 全労連としては、賃金の底上げ、特に非正規労働者への波及を意識し、最低賃金の引き上げと公契約条例の拡大を強調している。90年代以降、サービス業が広がって非正規雇用が増加し、産業と雇用形態での格差が鮮明になってきた。底上げは民間企業だけでなく、地域相場づくりを意識した公務のたたかいも重要で、春闘の今日的な意義の一つだ。 2000年代前半に大幅賃上げから最低生計費の底上げ要求(誰でも月額1万円以上、時間給1000円以上)に切り替えた。昔のように大手組合が賃上げ相場を引っ張る時代ではない。春闘は一斉に要求を掲げるたたかいの節目だ。 ▼地域から最賃底上げを ――非正規の運動をどう展開するのか? 08年の「年越し派遣村」以降、労働条件底上げが必要という社会的な合意はできている。例えば最賃をめぐって昨年、中央の目安を上回る引き上げ額を決めた地方が相次いだ。地方経営者の間では、賃金の高い大都市へ労働者が流出することで地域経済が疲弊することへの危機感が強い。今年は、地域から最賃底上げの運動を展開し、水準が低いC、Dランクの引き上げをめざしたい。 4月から全面施行される改正労働契約法の不十分さはあるが、無期雇用への転換をめざす手掛かりにはなる。流通や医療分野で労働組合の好事例をつくり、波及させていきたい。 ――大企業の内部留保はどうする? 内部留保の一部を取り崩せば賃上げは可能という試算は、その巨額さを示す点で意味がある。私たちは大企業に対し、賃金で「取り崩せ」と迫るというより、その蓄積の仕組みも念頭に、社会的還元や応能負担の必要性を訴えたい。偏った富の配分を変えていく制度・仕組みの是正を同時に訴えている。 例えば、最賃が引き上げられれば厳しい中小企業も出てくる。中小にも税制や補助金などの制度を通じて富を再配分する仕組みが必要だ。国内に500兆円規模のGDPがあっても、結果として富が大企業や富裕層の減税に回され、大型公共事業に向かっている。富の配分が地域や労働者、中小企業へ回るよう、制度政策の変更を迫る世論づくりを重視したい。 ――消費増税や年金問題も春闘の課題なのか? いずれも労働者の生活に大きな影響を与える。社会保障の底が抜ける状況を放置しておいて、賃金も雇用の安定もない。 昨年の春闘では「消費増税反対」の署名が一番多く集まった。「これ以上生活を悪くするのはやめて」というのが組合員の率直な声だ。「生活を守れ」の運動を進め、幅広い階層の人々に共感を広げる取り組みを強める。13春闘は、賃金改善と「生活守れ」を運動でつなげていく。 ――安倍政権にどう向き合うのか? 民主党政権には「コンクリートから人へ」など評価する点もあった。途中で、構造改革・新自由主義路線、サプライサイド重視(法人税減税や規制緩和で企業など供給側を重視し、経済成長を促進させる考え方)に後退した。安倍政権は、その点がもっと露骨だ。 安倍政権が、労働者派遣法の再改悪や06年の「ホワイトカラー・エクゼンプション」のような労働時間の規制緩和を出してくる可能性がある。注意が必要だ。 ▼改憲との闘いを重視 ――春闘で憲法問題も取り組むべきなのか? 当初は春闘後段から、9条(戦争放棄)の改悪反対と25条(生存権)に焦点をおいた「憲法がいきる日本署名(仮称)」の開始を考えていた。しかし、年末総選挙で一気に状況が変わり、96条(改憲手続き)改正も含めた明文改憲の危険性が高まってきた。焦点は9条だ。7月の参議院選挙は極めて重要で、改憲反対の取り組みを前倒しすることとした。改憲策動との闘いは2000年代初めから継続しており、組織内の違和感はない。 ――今年の方針は若者対策を重視しているが 就職しても非正規雇用、正社員になっても定着率が低い。まさに「使い捨て」状態の青年労働者にどう接近していくのか模索中だ。職場に入ってきた若者を対象にするだけでは不十分だと議論し、「若者にまともな雇用を」というキャンペーン運動に挑戦することとした。 今回初めて、対策チームを立ち上げた。若者の意識をつかみ、どうアプローチしていくか。ローカルユニオンや首都圏青年ユニオンの経験も生かしていきたい。 ▼要求の不一致は残念 ――連合とはもう「共同」しないのか? もちろん、労働者課題で一致するものがあれば共同で取り組むのは当然だ。最低賃金や公契約条例では向かうところは同じだ。 公務員の賃下げ課題をめぐって、11年10月に連合に対する厳しい談話を出したのは事実だが、それは全労連が考える労働組合のふんばりどころを述べたものだ。消費税増税やTPP(環太平洋経済連携協定)、原発という国民的関心が高いテーマでは、必ずしも要求が一致していないのは残念だが、全労連としては、労組に対する国民からの期待に応える立場は維持したいと考えている。 ――要求を出せない職場もあると聞く 論議をすると、青年組合員から「賃上げできる状況ではない」という声が上がることもある。会社の目先の業績だけで判断する傾向があるのは事実だ。要求提出を高めることが課題だ。 一方で前進している運動もある。決して押されっぱなしというわけではない。5年前までは「公契約条例」は専門家のみが知っている話題だったが、今では7自治体で制定されてきている。東京の最賃も5年前は、850円は考えられなかった。 3・11以降、人々の考え方は変化している。地域は疲弊しても東京・大都市さえ良ければいいという社会のありように批判が起きている。原発やオスプレイなどの運動の高揚はその例だ。その国民意識と逆方向にエンジンをふかそうとしている安倍政権には、相当反発が強まるのではないか。春闘をたたかいながら反転攻勢の足掛かりを築きたいと考えている。 |
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