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2013年 5月11日

ILO「日本の労働政策に注視」
異例の勧告

「規制緩和」阻止の手掛かりに  

 国連機関の一つ、ILO(国際労働機関)の専門委員会がこのほど、日本の労働政策について今後注視することを勧告の中で表明しました。とりわけ日本政府に対し、非正規労働者の待遇改善のほか、女性や若者の雇用に力を入れるよう求めています。

▼旧郵産労申し立てで

 勧告は、2010年9月に郵産労(現・郵政産業労働者ユニオン)が、非正規労働者の待遇改善をめぐり、ILOに申し立てたのがきっかけ。当時、日本郵政は、政府の「10万人正社員化」の要請を受けて登用試験を始めたものの、対象が一部に限られ、10~11年の合格者は約9500人にとどまりました。このため、組合が122号条約(雇用政策に関する条約)に基づき、正社員化の早期実現を訴えたのです。併せて全労連が、低賃金で雇用が不安定な非正規労働者が急増する日本国内の現状についても報告しました。

 122号条約は、加盟国に完全雇用(非自発的な理由による失業者がいないこと)を促進するための積極的な政策などを求めています。日本は1986年に批准済みです。

▼日本の雇用情勢を監視

 勧告は、日本政府に対し約20万人いる郵政の非正規労働者について「より不安定な状況にするのではなく、雇用の質を高くするためにどのような契約が行われたか」を情報提供するよう要請しました。

 日本の雇用情勢にも深く言及しています。非正規労働者が雇用全体の3分の1を占めている点に関し、「正規と非正規の格差が拡大している」「より非正規労働者に失業が拡大している」と指摘。政府に格差を縮小する政策を行い、非正規労働者が正規雇用に就くことができる仕組みについて詳しい説明を求めました。東日本大震災の被災者や女性、若者の雇用を促進する措置などについても一つ一つ報告を望んでいます。

 つまり、ILOは日本の雇用情勢全体を監視し、政策効果の報告を迫っているのです。ILOに詳しい牛久保秀樹弁護士は「122号条約は理念を定めたものと言われていたので異例。勧告が出た意義は大きい」と高く評価しています。

▼組合「反転攻勢の材料に」

 現在、政府の規制改革会議などでは、財界メンバーらが「解雇の金銭解決制度」や解雇規制を緩やかにする「地域・職種限定型の正社員」などの議論を交わしており、6月に取りまとめられる見通しです。

 郵政産業労働者ユニオンの廣岡元穂委員長は、4月27日の報告会で「労働規制の緩和は格差拡大や雇用の不安定化につながり、条約の趣旨に反する」と強調。勧告を「規制緩和に歯止めをかける材料」として、積極的に活用するよう労組に呼び掛けています。

 規制緩和をめぐる議論はこれからが正念場。勧告のように失業の不安なく誰もが安心して働ける社会へのアピールが不可欠です。

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