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2013年 4月11日

際限ない長時間タダ働き制度
ホワイトカラー・エグゼンプション

米国ルールへの変更狙い  

 安倍政権の下、残業代が支払われない人々を増やす「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入がささやかれています。実現すれば働く人の懐が寂しくなるだけでなく、過労による健康被害が増えることも懸念されます。狙いは、米国標準への国内ルールの作り変えです。

▼安倍政権、再び導入試み

 この制度は呼び名の通り、事務や研究開発などの従事者を意味する「ホワイトカラー」で、係長など一定の役職以上の人への残業代支払い義務を除外(エグゼンプション)する仕組み。今年2月、にわかに浮上しました。首相の諮問機関「規制改革会議」で、今後の検討項目に導入と読み取れる文言が盛り込まれたのです。

 日本ではかつて2006年にも導入しようという動きがありました。当時の首相も今と同じ安倍晋三氏。「残業代ゼロ法案」などと批判を浴び、労働基準法改正法案に盛り込むことが見送られました。

 残業代問題と併せて懸念されたのが、過労による健康被害の増加です。現行法では労働時間の上限基準が設けられ、使用者は原則、従業員の労働時間を管理する義務があります。過労死で、企業や団体の責任が問われるのはそのため。制度が導入されれば、義務がなくなるわけで、過労で病気になっても「自己責任」とされてしまいかねません。

 当時、制度を検討した厚生労働省の労働政策審議会で、導入を強く主張した使用者側委員の奥谷禮子氏(人材派遣会社のザ・アール社長)が「(過労死は)自己責任。会社の責任というのは甘えている」と発言したのは有名な話。推進側の本音があけすけに語られたものでした。

 「契約」に基づく権利が重視され、労働時間や仕事内容がきっちり決められている米国と違い、日本は個人の権利主張が難しい社会です。「同僚が残業しているから帰りにくい」ということもある日本の職場風土。そこに米国のルールを押し込めば、働かせ過ぎへの歯止めがなくなり、際限のない長時間「タダ働き」を招くでしょう。

▼もともと米国の要請

 注目すべきは、元々米国の要請でもあることです。

 06年の「日米投資イニシアティブ報告書」によると、米政府が日本政府に現行の労働法制に代えて、ホワイトカラー・エグゼンプション制の導入を要請したとの記述があります。全く大きなお世話と言いたいところですが、日本政府は言われるままに「検討します」と答えているのです。ちなみに、この時には解雇の金銭解決制も要請していました。

 米国には1日8時間を超えて働かせた場合、5割の割増賃金を支払うという程度の規制しかありません。日本の労働規制を緩めたいという米政府の要請は、日本で活動する米国企業の要請でもあります。日本経団連も同じ立場を取っています。

 折しも首相は、TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加を決めました。労働や政府調達(公共事業など)、環境、投資など国民生活に深く関わるルール作りには、交渉参加国で唯一の超大国である米国の意向が強く反映されるとの見方もあります。

 米国をスタンダード(標準)とする国内制度の改定は、今後一層強まることが予想されます。注意が必要です。

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