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2013年12月12日

ワタミに懲罰的慰謝料を請求
過労自死遺族が提訴

「過労死繰り返さないで」

 居酒屋チェーン大手・和民の新入社員だった森美菜さん(当時26歳)が入社2カ月後の2008年6月に過労自殺に追い込まれた問題で、遺族が12月9日、会社・経営陣に安全配慮義務違反があったとして、運営会社とワタミ本社の2社、創業者の渡邉美樹参院議員らを相手取り、東京地裁に提訴した。逸失利益など約1億5300万円の損害賠償を求めている。賠償額には、ワタミグループが過労死を繰り返さないよう懲罰的意図を込めた慰謝料7000万円が含まれている。

▲新人に残業141時間

 訴状によると、美菜さんは08年4月にワタミフードサービスに入社し、神奈川県横須賀市にある京急久里浜駅前店に配属された。入社前は「所定労働時間が8時間」「深夜勤務は週4日程度」と説明されたが、実際は経験のない調理業務を覚えるため開店2時間前の午後3時に出勤。勤務終了の午前1時を過ぎても清掃や翌日の準備に追われ、入社直後1カ月間の残業は約141時間に及んだ。

 さらに6~17日連続の深夜勤務が繰り返され、電車の始発時刻まで店内で待機する日々が続いた。休日も早朝研修会の参加を強制され、レポート作成や創業者の言葉を集めた理念集を覚えるテスト勉強に追われ、5月中旬には適応障害を発症。その後も業務の負担が増し、6月12日に社宅近くのマンションから飛び降りて死亡した。

 原告側は、美菜さんが長時間労働や休日も過大な負担を強いられ、十分な休息もとれないまま健康状態を悪化させたとし、「悪質な安全配慮義務違反に当たる」と主張。会社役員の損害賠償義務を定めた会社法429条1項、民法上の不法行為責任に基づき、損害賠償の請求を求めた。美菜さんの死亡をめぐっては昨年2月に業務上の労働災害と認定されている。

▲使いつぶしに反省を

 遺族側は昨年9月から真相究明や再発防止について創業者との話し合いを求めてきたが、ワタミ側は拒否。会社側から損害賠償額の確定を求める調停が申し立てられたが、安全配慮義務違反を認めなかったため、今年11月に調停が打ち切られた。父親の豪(つよし)さん(65)は「娘がなぜ死んだのか何度も質問したが、ワタミ側は答えてくれなかった。若い人を使いつぶすのではなく、育てる会社になってほしい」と訴え、会社・経営陣の反省を求めた。

 慰謝料請求額は一般的な過労死事件で支払われる金銭の約3倍に当たるという。創業者を含めたことについて原告側の玉木一成弁護士は「美菜さんへの採用内定通知が渡邉氏の名義で出され、遺族宛ての手紙でも自らの責任を認めている」と指摘。さらに美菜さんが過労自死に至った背景には「会社の勤務体系や制度が深く関わっている。人が亡くなって『賠償すればいい』という考えは改めてほしい」と話している。

 一方、ワタミ側は「訴状内容を確認のうえ、誠実に対応する」としている。

安全配慮義務

 仕事に伴う疲労やストレスが過度に蓄積して労働者が心身の健康を損なうことがないよう、使用者が配慮すべき義務のこと。労働契約法5条に定められている。違反した場合には、不法行為責任や損害賠償責任が問われる。

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