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労働基本権回復を求めてILOに追加情報を提出 |
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公務員制度改革関連法案が廃案になるなか、政府の対応を厳しく批判 |
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全労連は1月8日、02年にILOに提訴した公務員制度改革にかかわる事案について、ILOへ「追加情報」(別掲)を提出しました。 昨年の9月以来の提出となる追加情報では、給与臨時特例法(賃下げ法)が強行される一方、国・地方ともに公務員制度改革関連法案が、まともな国会審議もなく廃案になったことなどを伝え、労働基本権を踏みにじってきた日本政府を厳しく批判しています。 そのうえで、自公政権が「法案を再提出するか否かさえ不透明」であるとして、労働基本権回復をめざして、「すべての労働組合との交渉を強めることを日本政府に迫るよう強く要請する」とILOに求めています。 公務員制度改革をめぐっては、02年11月以降、昨年3月まで7度におよぶILO勧告が日本政府に示されてきました。こうした度重なる是正勧告にもかかわらず、日本政府はいまだに公務労働者の労働基本権を回復していません。 一方では、権利を制約しながら、不当な賃下げや退職手当削減をはじめ、大阪市に見られるように職員の政治活動の禁止や労働組合活動への乱暴な介入が強められています。世界的にも非常識な日本の実態を国際的にも明らかにしながら、公務労働者の権利回復のたたかいを前進させ、政府に法案提出をはじめ労働基本権の全面回復を迫っていくことが求められています。 日本政府の「公務員制度改革」に関する提訴 (2183号案件)に係る「追加情報」 2013年1月8日 全国労働組合総連合 全国労働組合総連合(ZENROREN)が申し立てた2183号案件に関する2011年秋以降の新たな状況について、申し立て組合からの情報を以下のとおり提供する。 1、国家公務員給与引き下げ法の成立までの経過と問題点 (1) 日本政府が11年6月3日、国家公務員の給与を引き下げる「給与臨時特例法案」を国会提出した後の9月30日に人事院は、公務員給与を平均0.23%(899円)引き下げることなどを内容とした2011年賃金勧告を、政府及び国会に対して行った。 勧告の中で人事院は、「給与臨時特例法案」が提出されたことについて、「労働基本権制約の代償措置が本来の機能を果たしていないこととならないか、強い懸念を持っている」と表明した。 (2) この人事院勧告について政府は、0.23%の賃下げは平均7.8%の賃下げを行うとする「給与臨時特例法案」に「内包されている」として問題をすり替え、11年10月28日に勧告実施の見送りを閣議決定した。人事院勧告が全面的に実施されなかったのは、1982年以来のことである。 この閣議決定に対して人事院は、「人事院勧告と給与臨時特例法案は、趣旨・目的を全く異にする」とし、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告の完全実施を求める異例の人事院総裁談話を出し強く異議を唱えた。 全労連は、自律的労使関係制度を創設する国家公務員法改正法案が未成立の段階では、人事院勧告制度が国家公務員労働者の賃金を決定する唯一のルールであることを主張した。 (3) 「給与臨時特例法案」と人事院からの勧告の双方を受け取った国会では、人事院勧告を無視した政府・民主党に対して、最大野党である自民党は「給与臨時特例法案」による引き下げに加えて勧告による給与引き下げを実施すべきと主張した。また、人事院総裁は、勧告を実施しないことは憲法上の問題が生じると国会で答弁した。 このこともあり国会審議が紛糾し、2011年秋の第179回臨時国会では国家公務員の賃下げ法案は採決されなかった。 法案審議が暗礁に乗り上げるなかで政府は、民主党、自民党、公明党の3党による法案の修正協議に取り扱いをゆだねた。 (4) 3党による協議の結果、11年人事院勧告を実施して平均0.23%の給与を引き下げたうえで、役職段階に応じてさらに4.77%から9.77%の給与引き下げを12年4月から14年3月まで行うとする新たな賃金引き下げ法案が「合意」され、12年2月22日に議員立法として提出された。 3党による「修正協議」は、当事者である日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)などの意見を聞くことも、説明することもなく進められ、国民の目の届かない「密室協議」で合意された。 (5) 全労連は、3党の協議が開始されたとのマスコミ報道に接した2012年2月初旬に、人事院勧告に上乗せして賃金を引き下げることの問題点を次のように指摘し、各政党に自重を求めた。 1) 公務員給与が国会審議によって法律で決められるとしても、法定されたルールの尊重は必要である。労働基本権がはく奪されている国家公務員の賃金決定の基準は、民間賃金との均衡を意味する「情勢適応の原則」である。国会においても、「情勢適応の原則」にもとづく人事院勧告の十分な尊重が必要である。 何らの根拠も持たないまま国会が、政府の提案と人事院の勧告を合体させる大幅な賃下げを国家公務員労働者に強いることはそのルールに反している。 2) 政府が国会に提出している国家公務員法改正法案等では、政府と労働組合の交渉による協約にもとづく法案を政府が責任をもって国会提出するものの、最終的な決定権は国権の最高機関である国会に委ねられている。いわゆる勤務条件法定主義の枠内での労働協約締結権を認めるのが自律的労使関係制度である。 そのような国家公務員制度改革法案のもつ問題点もふまえれば、行われようとしている3党合意による賃金引き下げの合意は、国会による国家公務員労働者の労働基本権侵害の悪しき前例となりかねない。 (6) 民主・自民・公明の3党は、労働基本権にかかわる踏み込んだ審議を行わず、3党提出による給与引き下げ法案を12年2月29日に強行成立させた。これにより、11年勧告による平均0.23%の給与引き下げが11年4月にさかのぼって実施され、12年4月からは平均7.8%の給与引き下げが強行されることとなった。 この賃金引き下げ法の成立に抗議し、全労連傘下の国公労連(KOKKOROREN)は12年5月25日に、人事院勧告を超える給与引き下げ法案を国会が一方的に成立させたことは、労働基本権保障を定めた憲法28条、および、結社の自由を保障するILO条約に違反するものとして、東京地裁に提訴した。 裁判は、現在、口頭弁論がおこなわれ、公務員労働者の基本的人権保障を最大の焦点にして争われている。 (7) 国家公務員労働者の賃金引き下げ法の成立を受けて12年5月11日に政府は、独立行政法人(99法人)と国立大学法人(共同利用機関法人を含め100法人)に対し、国家公務員に準じた賃金引き下げを求めるとの方針を決定した。 この方針にもとづき、所管する府省庁が各独立行政法人等への圧力を強めた。その結果、すべての法人で何らかの形で賃金引き下げが実施された。その中では労働協約の一方的な破棄や、労使合意にもとづかない就業規則の一方的変更による賃金引き下げも散見された。 法人への予算削減を示唆しながらの執拗な政府の要請は、法人の労使関係への介入に外ならないことから、12年11月27日には、国立大学法人等を相手に、一方的な賃金引き下げ分の支払いを求める裁判を国立大学法人等の労働組合が提訴する状況も生じた。 国会での賃下げ法案の強行成立が公務関連部門の労働者の権利を連鎖的に侵害する事態は、軽視できないものである。 (8) 人事院は12年8月8日に、12年人事院勧告を行った。 不当な賃下げが実施された直後の勧告であるにも関わらず、人事院は官民賃金の較差はわずかだとし、賃金改定を見送った。人事院は、12年4月1日時点における公務員給与が民間よりも7.67%(28,610円)低いことを確認しているが、国会で賃下げ法が成立していることを理由に較差是正を求めなかった。 国家公務員法28条では、官民で同時期に支払われた賃金の較差の是正を求めることが人事院勧告制度の役割であるとされている。12年の賃金勧告はこのルールを逸脱しており、結果として根拠のない賃下げ法を人事院が容認したという点できわめて重大な問題がある。 政府が、労働基本権制約の代償措置だとする人事院勧告制度の形骸化の進行を示すものであり、公務労働者の労働基本権の回復はより緊急の課題となっている。 2、国家公務員制度改革法案をめぐる状況 11年6月に国会提出された国家公務員制度改革法案は、11年秋の臨時国会では一度も審議されず、続く12年の第180回通常国会でも会期末を約3週間後にひかえた6月1日に、衆議院本会議で法案の趣旨説明と各党による代表質問が初めておこなわれただけであった。 通常国会は、その後12年9月8日まで会期が延長され、会期末直前に衆議院内閣委員会において国家公務員制度改革関連4法案の趣旨説明と質疑を行なわれた。首相への問責決議が可決されるなか、与党の民主党議員だけが出席する委員会で質疑が行われると言う異常な審議であった。 結果的に、公務員制度改革関連法案は12年11月16日に衆議院が解散したため廃案となった。 賃金引き下げ法案を強行した国会は、公務員制度改革法案の成立には極めて消極的であること、そのような事態を改善するための政府の努力の不十分さなどは、一連の経過でも明らかである。 こうした現状をふまえれば、今、国家公務員は無権利状態に置かれていると言わざるを得ない。 3 地方公務員制度改革をめぐる状況 (1) 日本政府が2011年6月に「地方公務員の労使関係制度に係る基本的な考え方」を発表したことを受け、全労連は11年9月28日に「意見書」を政府に提出し、自治体首長と地方議会議員がそれぞれ住民選挙で選ばれるという地方自治体の特性をふまえた制度確立を求めた。 しかし、その「意見書」に対する政府としての回答は、現在でも示されていない。地方公務員制度改革に向けた交渉・協議に政府はほとんど応じておらず、一方的な検討が進められてきた。 政府は、11年12月26日に「地方公務員の新たな労使関係制度に係る主な論点」、12年3月21日に「地方公務員の新たな労使関係制度の考え方」を発表したが、このいずれもが、政権党である民主党内部に設置されたプロジェクトチームに示されたものであり、労働組合など関係団体に正式提示されてはいない。 (2) その経緯の上に政府は、12年5月11日に「地方公務員制度について(素案)」を公表した。 「素案」は、人事委員会勧告制度の廃止を基本に、地方労働委員会による交渉不調の場合の調整システムを設けることや、当局による不当労働行為の禁止などが示された。その内容は、国家公務員制度改革法案が基本で、財政的な困難をもつ小規模組合の団体交渉権を実質的に排除する労働組合の認証制度や、管理運営事項を交渉対象からはずすなどの問題点があった。 そうしたことから、全労連は12年6月28日、ILOが度々指摘する「意味のある話し合い」を十分に行っていないことに抗議しつつ、「素案」に対する「意見書」を政府に提出した。 その後、政府との協議は一定回数持たれたが、政府は国家公務員制度改革法と同じ制度とするとの対応を一切変えず、十分な交渉・協議とはならなかった。 (3) 政府は、有識者による「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」を12年9月に設置し、関係者からのヒアリングがおこなわれた。 ヒアリングで、地方自治体の使用者団体である全国知事会、全国市長会、全国町村会の代表も意見をのべた。3団体ともに、人事委員会勧告制度廃止に強い懸念を示し、消防職員の団結権・協約締結権の回復に強く反対する意見をのべ、労働基本権回復への消極姿勢を強く示した。 この経過の上に政府は、12年11月15日に地方公務員の協約締結権を回復させる関連2法案を国会に提出した。その際、地方自治体の使用者団体から反対意見の強かった消防職員の労働基本権については、団結権のみの回復にとどめる内容であった。 なお、この地方公務員制度改革法案も、衆議院の解散と同時に廃案となった。 4、おわりに (1) 残念ながら日本では、公務員労働者の労働基本権回復について、国会議員や地方自治体の首長の多くが未だに消極的である。公務員をひと括りにして労働基本権を制約し続けることの不当性についてさえ、十分な合意がはかられていない。このような公務員の労働基本権についての議員などの後進性は、結社の自由をはじめとする国際労働基準を日本国内に受けいれることに消極的な日本政府の姿勢を反映している。 全労連は、労働基本権の保障は日本国憲法第28条の要請にもとづくものであること、度重なるILO勧告や「教員の地位に関する勧告」など国際機関が日本の公務員の労働基本権回復を求めていること、などをふまえた早期の公務員制度改革を求め続けているが、政府の対応は決して十分なものではない。 (2) また、2012年に入り、大阪府大阪市で、市職員の政治活動の禁止や労働組合運動への規制を強める条約が制定されるなど、公務員への権利制約を強める動きが出てきていることも看過できない日本の状況である。 国家公務員制度改革法案も、アリバイ作り的に出された地方公務員制度改革法案も、衆議院解散と同時に廃案となり、総選挙後の政権の法案再提出が必要となる。そのような公務員労働者の権利を否定する動きが強まっているもとで、新たな政府が法案を再提出するか否かさえ不透明だと言わざるを得ない。 以上の点を改めて強調し、02年以降、7度におよぶILOからの勧告をいまだに日本政府が履行していない事実をふまえ、公務員労働者の労働基本権回復を目的にした公務員制度改革の早期実現と、それに向けたすべての関係労働組合との交渉を強めることを日本政府に迫るよう強く要請する。 以 上 |
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