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2013年 6月13日

放水車や催涙弾を使い容赦ない弾圧
トルコ労働運動とタクシム広場

高揚する反政府デモの深部  

 トルコで大規模な反政府デモが続いている。

 今回の事態は、エルドアン首相の強権ぶりに大衆の怒りが爆発したためともいわれる。アルコール販売の制限への不満やシリア内戦関与に対する不安は確かにある。しかし、ショッピングモールを建てるという公園再開発計画に、市民と労組組合員らが執拗(しつよう)に反対しているのはなぜか。その点に言及している報道は見当たらない。そこで、昨年まで現地でメーデーに数回参加した者として、イスタンブールにあるタクシム広場の歴史的背景について考えたい。

▼押さえ込まれたメーデー

 メーデーは今年、大きく荒れた。当局が再開発工事を口実にタクシム広場の使用を禁止したためだ。当日は市の公共交通をストップさせる「ロックアウト」まがいの強硬策に加え、広場に向かう者は放水車や催涙弾を使い容赦なく抑え込んだ。

 この広場でメーデー大集会が再開されるようになったのは、ここ数年のことだ。1977年の式典中、何者かが発砲し、群集がパニックに。その渦中で30数名が死亡した。犯人は捕まらなかったが、今日では極右の過激派に秘密警察が手を貸した事件と認識されている。その3年後には軍事クーデターが起き、戒厳令が数年間敷かれ、革新的な労働団体などは強制的に解散させられた。民政移管後、タクシム広場はさまざまな団体のイベントに開放されたが、メーデー使用申請には一度として許可が下りなかった。

▼勤労者の思い入れ強く

 事態が動いたのは5年前。メーデー参加者に対する治安当局の過剰な取り締まりがネットを通じて世界中に伝えられ、国際的な抗議の声が上がったのだ。世論にも押され、政府は翌年、タクシム広場を一部の労働団体代表者らに初めて開放したほか、5月1日を再び祝日と制定した。翌2010年からは全面的使用を認め、全ナショナルセンターが共催するメーデー式典が実現した。昨年は推定で50万人が参加。これは、欧州最大規模である。

 留意すべきはトルコの労働者組織率がわずか6%(OECD統計、09年)であること。イスタンブールのタクシム広場へ大河のように流れ込む人々の多くは自主参加であり、労組の動員で5月1日の式典に来ているのではない。負の歴史にも規定され、この国では「働くものの祭典」に対する勤労者の思い入れは格段に強いのである。

▼政府の「変質」に不信感

 広場には1923年の帝政廃止と共和制誕生を記念する碑が建つ。国の近代化を推進した初代大統領アタチュルクの銅像と、革命を支援したソ連の政治家フルンゼと軍人ヴォロシーロフの像が並んでいる。

 公園取り壊しとモールの建設後は、イスラム色の強いエルドアン首相が広場にモスクを建てるともうわさされ、広場の性格を抜本的に変質させてしまう政府の動きに対する民衆の不信感は根強い。政権側は、「テロ容疑」を口実とした官公労組への弾圧や労働法令の改悪で労働団体に大きな圧力をかけているが、国際連帯を通じた闘争勝利もあり、新しい運動の萌芽も見られる。そうした動向に権力者も警戒心を解かない。

 現政権下で最大規模となった今回の抗議行動の深部には、タクシム広場とトルコ労働運動をめぐるこうした背景があるのだ。(ライター 浦田誠)

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