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2013年 7月29日

「このままでは振り落とされる」
最低賃金の周縁で

若者/コンビニ夜勤で働く日々

 「僕の部屋はカーテンが常に閉められたままなんです」。まだ表情にあどけなさが残るAさん(19歳・男性)は、少しでも高い時給にありつこうと、最近、コンビニエンスストアの夜勤専門で働き始めた。深夜から朝までの8時間を週5~6日のペースで勤める。帰宅後はこんこんと眠り、目が覚めれば世間は帰り支度の時刻。カーテンを開ける必要に迫られることはない。

 時給は1070円。労働基準法上の深夜割増25%を除けば、最賃(神奈川は時給849円)との差は十円玉1個分もない。オーナーの機嫌を損ねては、今の勤務シフトを確保できなくなるかもしれず、今夜も接客、品出し、検品の作業にいそしむ。

▼一歩目からフリーター

 社会人としての一歩を、フリーターとして踏み出すことを余儀なくされた。

 高校在学中の就職試験は6社受けた。学校推薦を得て就職する場合、同時に複数の応募はできない。1社ごとに結果が出てから再挑戦しなければならないため、卒業までの半年間は短期決戦となる。
 地域経済が疲弊し、企業が自前の人材育成を敬遠するようになった今、高校に寄せられる求人は激減した。Aさんの高校では、教師がインターネットで一般の求人をかき集め、生徒に紹介していたという。
 就職口が少ないため、商業科でも多くは専門学校か大学に進学する。しかし、女手ひとつで生活を切り盛りする母子家庭ではそうもいかない。結局、内定は得られず、在学中からのアルバイトを続けることになった。

▼「将来は考えずに働く」

 卒業後、一度だけ、正社員の仕事に就けそうになったことがある。ハローワークで勧められた製造業の仕事で、「トライアル雇用」の求人だった。35歳までの若者を最長3カ月間雇う企業に、国が奨励金を支給するというものだ。

 厳しい労働だが、時給換算すれば最賃割れの水準。「腹筋100回、腕立て伏せ100回」など、仕事とは直接関係のない「業務命令」が何よりも苦痛だった。「自分を雇い入れたのは奨励金目当てなのではないか」という不信感もわき起こり、退職した。

 「なんかもう燃え尽きた感じがします。ハローワークの求人票には思わせぶりなことが書かれているけれど、実際は違う。投げやりになってしまって」

 近ごろは同居する母親との口論が絶えない。夕方5時までにハローワークに行けないことが多いためだ。わが子を心配する余りの母の小言だが、受け止められる心のゆとりを持てない日が続く。

 「このまま時給850~1000円程度の仕事を続けると思うと、社会から振り落とされてしまうような気がして不安です。給料の半分を家に入れていますが、半年後には国民年金の支払いも始まります。自動車の運転免許も取れない。もっと先を見れば、今の給料じゃ、子どもや親を養うことなんて絶対できない。将来のことは見ないようにして毎日働いています」

                                 ◇
 3人に1人が非正規という日本の雇用風景。安倍政権はわずかに残る雇用の安定装置をも外そうとしている。よくも悪くも、企業が社員の生活を背負っていた時代が転換期を迎えようとしている今、暮らしを支える新たな仕組みが必要となっている。

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