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2013年 9月24日

大都市なのに低い愛知
日本の最低賃金(8)

改めて生活保護を考える

 地域別最低賃金の改定額が出そろいました。結果は加重平均で15円のプラス。愛知が中央最賃審議会の引き上げ目安に全国最高の3円を上積みし、780円になりました。しかし、よくよく考えると、Aランクである上に、トヨタを擁する同県がなぜ、Bランクの埼玉(785円)や、同じく京都(773円)と同じような水準なのかという疑問がわきます。そこでは、生活保護額と比較する際の現行計算方法の問題が、改めて浮き彫りになります。

▲生活保護の低さが影響

 愛知がAランクの中でも低額で、東京や神奈川より90円近く低いのは、2008年の改正最低賃金法施行以来、一度も生活保護を下回らなかったことが、大きく影響しています。

 近年の全国的な最賃の伸びは、大都市部で生活保護を大きく下回り、そこに追いつくために引き上げられたことによる効果でした。

 一方、公営住宅が多かったり、生活費も比較的低い農村部の多い県は、厚労省の計算方法だと、生活保護は低くなりがちです。というのも、生活保護費を構成する「生活扶助(生活費など)」は、比較的低額な農村部も含めた人口加重平均を採用し、「住宅扶助」は保護利用者の実績値(実際に支払われた家賃)の平均を使っているからです。

 愛知の場合、農村部や、公営住宅が多く、保護利用者の住宅扶助の実績値が低くなることが、生活保護が低く換算される要因と考えられます。

 生活扶助の算定で県全域を平均するということは、保護費が相対的に高い県内都市部で最賃水準で暮らす人は、生活保護水準を下回る暮らしを送っている可能性があるということです。

▲約90円高くなる計算
 
 この問題を解決する決め手は、県庁所在地の生活扶助を用いることです。この点は連合も強調しています。

 愛知県の県庁所在地、名古屋市の住宅扶助(12~19歳・単身世帯)は、同市によると10万2780円。これに、2011年度の愛知県の住宅扶助実績値2万6000円(厚労省・概数)を加えたものが生活保護となります。同省が示す額を約2万円上回ります。

 これをもとに現行の計算方法で換算した時給は、なんと874円。13年度の答申額より約90円以上高くなる計算です。

 もちろん、同省の計算方法の問題点は、生活扶助だけでなく、ひと月の労働時間を長く設定していることや、生活保護制度にある勤労控除がないこと、住宅扶助は安価な公営住宅が中心になりがちな実績値ではなく、市価相場に近い「住宅扶助特別基準額」(居住地ごとに設定)を使うべき――など、山積です。

 さしあたり、生活扶助の計算方法を改善するだけでも、これだけの差が生じることは押さえておきたいポイント。逆にいえば、実際のところ最賃はまだまだ生活保護よりも低いのが現状だということでしょう。

チャンスは次回の目安全協来年度にスタート予定

 最低賃金との比較で用いられる生活保護の計算方法は変えられないものではありません。厚生労働省によれば、中央最低賃金審議会の公益、労働、使用者の委員でつくる「全員協議会(全協)」で改定が可能。順当に進めば、来年度にも開催される見込みです。

▲今からの世論づくりを

 現行の計算方法は、「生活保護との整合性」が明記された改正最賃法施行の2008年、中央最賃審・目安小委員会で決められたものです。

 当時、労働側は、県庁所在地の生活扶助の額を用いることや、ひと月の労働時間を平均所定内実労働時間(※参考・11年で全国平均166時間)で計算するよう主張。しかし、公益委員が受け入れず、使用者側の主張を多く採用しました。
 では、毎年開催の目安小委員会で決められたことなのに、なぜ変更するには数年に一度の別の会議でなければならないのか、という疑問が当然生じます。厚労省によると、「事後了承」の形だけれども、11年に開催された全協で確認されたからだそうです。

 その全協は、A~Dのランクの各都道府県の構成を再検討する「目安全協」というもので、約5年に一度開かれます。全協はそのほかのテーマでも審議委員の請求により随時、開催できますが、公労使から最低でも各一人以上の賛同が必要とされるため、容易ではありません。

 現実的には、定期開催である次の目安全協がチャンス。順当に進めば、14年度中には次の審議がスタートし、15年度中に結論を出す見込みだといいます(同省)。

 一方、安倍政権は生活扶助を大幅に削減。この点の改善も含め、今からの世論づくりが肝要です。

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