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雇用戦略対話合意の真の狙い |
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意義は今も色あせず |
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「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1000円をめざすこと」。最低賃金について、2020年までの目標を定めた雇用戦略対話合意(10年)です。国の政策で、めざすべき金額を初めて明示しました。その意義は今も色あせていません。 ▼「正常な経済状況に」 この前段には2つの出来事がありました。一つが、07年の最賃法改正で、「健康で文化的な最低限度の生活ができること」と憲法25条(生存権)と同様の規定が盛り込まれたこと。二つ目は政労使による「成長力底上げ円卓会議」(07~08年)で、「小規模事業所の高卒初任給の最も低位の水準との均衡」という、一応の水準目標が設けられたことです。 そして、09年の政権交代を経た2010年。「『需要』からの成長」を掲げた新成長戦略を実現する政策をつくるため、雇用・労働分野については、政労使の代表が話し合う枠組み「雇用戦略対話」が設けられました。 その労働側委員で、連合副事務局長だった團野久茂氏(現・国際労働財団専務理事)は、「最賃で『健康で文化的な最低限度の生活』ができるかというと、そうはなっていない。連合が試算したリビングウェイジ(最低生計費)は時給920円。まずは何がなんでも早期800円と、全国平均1000円をめざす。そして、正常な経済状況に戻していくということを主張した」と当時を振り返ります。 経営者団体は猛反発しましたが、ほぼその通りの内容となりました。 ▼近年にない大幅引き上げ 「合意」以降、毎年の最賃引き上げ額の目安は、その年の賃金上昇率と、雇用戦略対話合意、生活保護とのかい離幅解消分の3つを積み上げる方式で決められるようになりました。 直後の10年度改定ではA、B、C、D全てのランクで目安が10円に。全国平均で17円という近年では最も大きな引き上げ幅となりました。 しかし翌年、東日本大震災が発生。経済の急激な落ち込みは、安定軌道に乗りかけていた、最賃の引き上げにも影を落とすことになります。 「全国最低800円」を最優先 震災後、使用者側は「経済が落ち込み、雇用戦略対話合意を実現する前提条件が満たされていない」と、攻勢に出るようになりました。それは「合意」の追加条項に、「なお、上記目標案は、新成長戦略で掲げている『2020年までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長』が前提」とあるためです。しかし、議論の経過などをみれば、前提条件といえるものではないように見えます。 ▼あいまいな記述 「優先条項は明らかに(目標額を示した)第1項だ」。当時委員で連合副事務局長だった團野久茂氏はこう指摘します。 民主党政権誕生時のマニフェストは「『全国最低賃金』を設定(800円を想定)」「『全国平均1000円』をめざす」で、連合も同じスタンス。前年には「年越し派遣村」が出現するなど、格差と貧困への世の中の関心は高く、この目標は既定路線でした。追加条項は内容もあいまいで、最賃引き上げの前提条件であるとの認識は、政府側や労働側委員にはなく、ほとんど議論にならなかったといいます。 確かに、追加条項は意味がよく分からない記述となっています。仮に前提条件として、文字通りに読めば、成長率の平均を算出できるようになる2020年までは、合意は有効にならないという、おかしな話になってしまいます。成長の「見通し」とも書かれていません。 團野氏は、追加条項について「第1項の説明に過ぎない」と話します。つまり、「名目3%、実質2%の成長」は、当時の新成長戦略の目標のことで、第1項がそれを実現するために設定されたことを示しているという解釈です。 ▼合意内容後退させるな 解釈の違いとは別に興味深いのが、第1項の書きぶりです。 「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1000円をめざす」とあるように、景気への配慮はすぐ後の「全国平均1000円」だけにかかるもの。「全国最低800円」は、景気に関係なく最大限早く実現すべきだということです。 直後の10年度の目安審議では、労働側はこれを根拠に「50円」引き上げを主張したといいます。当時、629円(09年度)だった最低ランクの最賃を、3年程度で800円に到達させようという主張でした。 安倍政権下、「合意」の扱いは今も不透明なままです。報じられているような「政労使の協議の場」で、今後、最賃について何かを決めるにしても、雇用戦略対話合意がめざす内容を後退させてはなりません。 |
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