京都府職員労働組合 -自治労連-  Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2013年 5月14日

「協同組合として役割果たせるか」
〈TPP交渉参加 産別からの提言〉

全労金 石田輝正委員長  

 TPP(環太平洋経済連携協定)については、組織として賛成、反対の判断はしていません。ただ、国民生活に大きく影響を及ぼす問題でありながら、偏った情報だけが独り歩きし、正しく理解し判断できるだけの情報開示が行われていないことに危惧の念を抱いています。また、食の安全や医療、雇用など暮らしに関わるさまざまな懸念事項が払拭(ふっしょく)されていない現状では、「拙速な交渉参加」は避け、慎重に検討すべきという立場です。

 昨年は国連が定めた国際協同組合年でした。背景には、社会経済開発や食料安全保障、雇用、環境問題、金融危機で果たしてきた協同組合の役割を高く評価したことがあります。危機にひんする世界経済の再生にも極めて有効とされ、各国政府にその発展を促すよう求めています。

 しかし、TPPに参加すると、非営利の協同組合に対する優遇税制の見直しを求められ、協同組合だからこそできる事業や役割が果たせなくなるのではないかという懸念があります。

 労働金庫は「銀行から融資を受けられない労働者のために労組が自らの手でつくった金融機関」として、住宅ローンや教育ローンを低金利、長期返済で提供するなど、社会的事業を軸に発展してきました。

 クレジットやサラ金など高金利で苦しむ人への低利の借り換えローンや、リストラなどで失業した人への小口融資も、協同組合である労働金庫だから実現できるのです。

 こうした協同組合を支える規制が取り払われるとどうなるでしょうか。メガバンクと同じ土俵での競争を余儀なくされ、社会的事業の縮小を余儀なくされかねません。

 同じく協同組合で、地域の中小企業や商店の経営を支える信用金庫や信用組合の役割にも影響が及ぶでしょう。

 労組の共済事業も影響が懸念される分野の一つです。民間保険会社と同じ競争条件を強いられる恐れがあります。

 米国はこれまで「対日年次改革要望書」で、日本の共済事業をやり玉に挙げ、民間企業との「イコール・フッティング(同じ競争条件)」を求めてきました。米国はTPP交渉の行方を左右する大国です。交渉内容が明確でない今、米国の狙いをきちんと見極める必要があると思います。

▼「今から懸念伝えよう」

 日本の交渉参加にあたって、まずはTPPがどういうものかを正確に知る必要があると思います。そのための情報開示の徹底を政府に強く求めるとともに、懸念事項について、労組が認識を共有しなければなりません。

 TPPに参加することで、収益の向上を見込めたり、建て直しを期待できる産業もあるでしょう。その「良さ」を理解することも必要です。もちろん、逆に大打撃を受ける産業があることも見過ごしてはなりません。

 その上で大切なのが「生活者の視点」です。「スーパーのどの商品がどれだけ安くなる」という薄っぺらな議論ではなく、生命や健康、雇用、社会のあり方など、暮らしに関わるさまざまな影響をつぶさにみなければなりません。

 日本社会にどんな影響があるのか、社会運動を展開する労働組合として、懸念事項を広く知らせる必要があります。今からでも決して遅くありません。交渉に参加した後で、「こんなはずじゃなかった」とならないためにも。

府職労ニュースインデックスへ