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2013年11月15日

「追い出し部屋」は人事権の乱用
リコー退職勧奨事件で東京地裁

労働契約法14条に違反 

 複合機の製造・販売大手リコー(東京都)の技術系社員の男性2人が退職勧奨に応じなかったことを理由に子会社の物流センターに出向を命じられたのは不当だとして、命令の取り消しを求めていた裁判で東京地裁は11月12日、判決を下した。篠原絵理裁判官は、自主退職に追い込むための出向は「労働契約法14条の人事権の乱用」と認め、無効を命じた。退職勧奨による慰謝料請求は棄却した。

 原告側の弁護士によると、労契法14条による判決は初めてという。

 リコーは2011年5月にグループ全体で約1万人の人員削減を発表し、同年7月以降に希望退職者の募集を始めた。本社で当時研究開発に携わっていた2人は、上司から希望退職の募集に応じるよう繰り返し面談を受けたが、断った。このため会社は同9月、子会社の物流センターへの出向を2人に命じた。

 原告2人は翌年2月に命令の無効と慰謝料を求め、労働審判を申し立てた。出向無効の判断が出たが、会社側が異議を申し立てたため本訴に移行していた。

▲人選方法に「慎重さない」

 判決は、人員削減の必要性は認めつつも、余剰人員の根拠や人選基準が曖昧で、人選担当者が出向先や業務内容を知らなかったことを挙げ、「慎重さや緻密さに欠けていた」と指摘。事前に物流センターへの出向をほのめかし、退職勧奨を断った全員を生産・物流現場に異動させていたことから、出向は「自主退職に踏み切ることを期待して行われたものであり、人事権の乱用だ」と結論付けた。

 一方、物流センターが通勤圏内で職位と賃金が同じままのため、出向は不法行為にまでは当たらず、退職勧奨も「社会通念上相当の範囲内」と判断した。

 原告の一人で登録特許を100件以上申請している男性(50歳代前半)は「リコーは判決を真摯(しんし)に受け止め、技術者としてのキャリアを元に戻してほしい」と語った。原告側の棗一郎弁護士は「企業がリストラと言えば、『追い出し部屋』のように何でもできるわけではない。司法のメッセージを受け止めるべきだ」と話した。

 リコーの退職勧奨をめぐっては、ほかに5人が東京地裁で出向・配転命令の無効を求めて係争中だ。

労働契約法14条

 使用者が労働者に出向を命じる場合、その必要性や人選などについて人事権の乱用があれば無効になることを定めています。 出向は企業内の配置転換とは異なり、別法人への異動となるため、判例は配転より厳しい条件を課しています。本人の同意は必要ありませんが、就業規則上の規定や出向期間、賃金など労働者の利益に配慮することを求めています。

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