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2013年11月12日

攻勢強める派遣業界
労働者派遣制度の審議会で

「利益誘導では」と疑問の声も

 労働者派遣制度を議論する厚生労働省の審議会で、派遣業界が攻勢を強めている。労働側が「派遣の自由化だ」と批判する厚労省の有識者報告書よりも踏み込んだ大幅な規制緩和を主張しているのだ。派遣労働者や労働組合からは「利害関係者による利益誘導ではないか」と疑問の声が上がっている。

▲「もっと規制緩和を」

 10月25日。労働政策審議会の需給制度部会で使用者側オブザーバー(参考人)として出席している日本人材派遣協会の理事、大原博氏は「派遣労働者本人の希望で3年以上働ける柔軟な対応も求められている」と述べ、派遣期間を最長3年とした有識者報告を上回る規制緩和を求めた。

 これまでも「(報告書に触れられていない)グループ内企業での派遣の8割規制も見直す必要がある」(8月30日)、「派遣労働者は労働者全体の1・7%に過ぎない。正規雇用を代替する恐れは極めて少ない」(10月10日)などと発言。参考人とは言え、直接の利害関係者が露骨に労働規制の緩和を求めているのが今回の審議の特徴だ。

 使用者側オブザーバーは、大原氏と日本生産技能労務協会の副理事長の青木秀登氏の計2人。青木氏が執行役員を務めるランスタッドの前身は、キヤノン偽装請負事件に関与したアイライン(2011年7月に経営統合)だ。両氏はEU加盟国で実施されている派遣先労働者との均等待遇については「難しい」と消極姿勢を貫く。
 オブザーバーが労働側の意見に反論することが多く、事実上、議論の中心的存在となっている。

▲報告書ベースに議論進む

 一方、労働側は、新谷信幸連合総合労働局長が「間接雇用である派遣労働は、労働者保護に欠ける。臨時・一時的なものに限り、正規雇用との置き換えを防止する現行法の考え方を堅持すべき」と繰り返し強調し、一歩も引かない構えだ。均等待遇の実現や専門26業務の絞り込み、派遣先への団体交渉ルールの確立など逆に規制強化を訴えているが、有識者報告書が足を引っ張っている。

 同報告書は、派遣労働の自由化を求める派遣協会の主張に沿ったもの。労働側は「議論のたたき台にはしない」と表明しているものの、部会を取り仕切る公益代表の鎌田耕一座長は報告書を取りまとめた張本人。否応なく報告書をベースに議論が進んでいる。さらに政府の規制改革会議が使用者側の意向を丸呑みした意見書を部会に提出し、労働側の孤軍奮闘が続く。

 年末の建議取りまとめに向けて部会は計6回開かれた。専門業務の範囲の見直しは労使で一致。それ以外の議論は労使の意見が激しくぶつかり、平行線をたどっている。

▲派遣労働者は外で訴え
 
 審議を見守る傍聴者からは「派遣会社の役員が規制緩和を求めるのは利益誘導に当たるのではないか」と疑問の声が出ている。審議会に派遣業界の代表が入るのは、製造業務派遣を解禁した03年の審議以来、2度目。厚労省は「複雑な派遣制度の見直し議論に当たり、事業を運営する当事者の意見を聞くため業界団体が参加している」と説明する。

 部会開催日の厚労省前では毎回、労働組合の街頭宣伝が行われている。もう一方の当事者である派遣労働者は外でマイクを握るしか声を上げる方法がない。

 全労連の井上久事務局次長は「派遣労働者の多くは安定雇用を望んでもほかに仕事がないため、やむなく働いているのが実態だ。派遣は労働者のニーズと吹聴するのは誤り。利害関係の濃い派遣会社の人間に一方的に発言させるのではなく、派遣労働者の声も聞くべきだ」と話している。

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