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「泣き寝入りする社会変える」 |
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偽装倒産・全員解雇乗り越え |
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東京・府中市にある「白糸台ガソリンスタンド」で偽装倒産と全員解雇を乗り越えた西白労働組合のメンバーが5月29日、新会社「イー・レボリューショナリー」を立ち上げた。倒産から120日に及ぶ自主営業からの再出発だ。代表社員の高橋顕夫さん(48)は「労働者が泣き寝入りする社会を変えたい」と意気込む。 ▼社長、組合つぶし狙う 1月29日朝。ガソリンスタンド運営会社「柴田商店」の社長は突然、仕事中の従業員20人に「今すぐ仕事をやめて帰れ」と言い放った。倒産と全員解雇の通告だった。負債総額は約3億5000万円。高橋さんは「ほとんどは親族からの借り入れ。組合つぶしが狙いだった」とみている。 柴田商店では昨年9月から未払い残業代などをめぐり、労使対立が激しくなっていた。資産家が会長を務める同社は、府中・調布市内の計2カ所でスタンドを経営し、社長はその息子。長時間労働やパワハラも横行し、27年間勤務した男性(53)は「有給休暇は1回も取れず、風邪で休めばその分給与から差し引かれた。みんな社長を懲らしめたくて、一昨年に組合をつくった」と証言する。 昨秋に東京管理職ユニオン(全国ユニオン加盟)に加入後、ようやく残業代の一部を支払わせたが、冬の賞与は全額カットされた。今年1月に組合が団交を申し入れると、わずか4日後に倒産。社長の放言も同じ日で、職場占拠と自主営業はそれから始まった。 ▼「奇跡の連続」 倒産で石油卸会社との取引が止まり、自主営業3日目でガソリンは尽きた。当初約20人いた組合員の脱落も相次いだ。高橋さんは「団結が崩れるという不安が頭をよぎったこともあるが、経営者だけが逃げ切る倒産が許せなかった」。そんな中で励みになったのが地元住民や利用客の支え。組合員の一人、根木謙太朗さん(24)は「スタンドがつぶれたのに、地元の人たちがわざわざ差し入れを持ってきてくれた。優しさがうれしかった」と語る。 幸運も重なった。近くに軽自動車の車検場があり、整備士の国家資格を持つ組合員が売り上げを稼いだ。管理職ユニオンが自主営業のノウハウを持っていた。10回以上に及ぶ交渉で、破産管財人の弁護士は立ち退きの強制執行に踏み切らなかった。最終的には、ユニオンを通じて組合活動に理解を示した不動産業者がスタンドの土地と建物を競売で落札。「奇跡の連続」と組合員たちは口をそろえる。 ▼リストラはね返す先例に 自主営業から106日目の5月15日に土地と建物の売買契約が成立。翌日に労使で和解協定を結び、争議は決着した。スタンドは組合員らが出資した合同会社で運営し、残った組合員8人で再スタート。社名には「エネルギー業界の革命児」という意味を込めた。 当面は車検業務中心だが、ガソリンを再び利用客に売ることや恩人である不動産業者へ確実に賃料を支払うため、約2000万円の運転資金獲得をめざす。高橋さんは笑顔でこう語る。 「本当に厳しいのはこれからだが、後ろばかり向いても仕方ない。金持ちが労働者に泣き寝入りを強いる社会を変えるパイオニアになる」 全国ユニオンは、京品ホテル(東京・港区)やサウナ王城(台東区)などで自主営業した例はあるが、会社再建にたどり着いたのは初めて。管理職ユニオンの鈴木剛書記長は「組合があれば、今回のようにリストラに抵抗できることを知らせたい」と話している。 |
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