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2013年 7月29日

東北こそ大幅引き上げを
日本の最低賃金

低い最賃、復興の足かせに

 東日本大震災が発生した2011年度の賃金改定では、被災3県の引き上げ額は1円でした。翌年は持ち直しましたが、「全国最低800円」の実現には程遠い歩みです。一方、東北地方からは、全国的にも最低クラスの最賃が復興の「足かせ」になっているとの声も上がっています。

▼「人が集まらない」

 被災地では求人倍率が上昇していますが、沿岸部の雇用は震災前の水準には回復していません。宮城県労連の鈴木新議長は「低すぎる最賃が復興の足かせになっている」と指摘し、次のように話します。

 「県沿岸部にある水産加工会社の経営者と懇談した際、『あまりに賃金が低いので人が集まらない』と嘆いていた。人々が地元に見切りをつけ、仙台や首都圏に出て行ってしまう。では賃金を上げればいいではないかというと、そうもいかない。震災で取引先が半分とか3分の1に減り、この先新たな顧客をいかに開拓しようかという時期に、一社だけで踏み切れないのが現実。なりわいの再生と被災地の復興のためには、特例措置でもいいから、中小への思いきった支援策を行い、最賃を引き上げるほかない」

 最賃の大幅引き上げに本腰を入れないと、被災地の産業と生活が立ち行かなくなるという訴えです。

▼「構造的な問題」

 甚大な津波被害を受けた岩手県でも同様の現象が起きています。最賃が低い分だけ、より深刻かもしれません(宮城は685円で、岩手は653円)。

 岩手の状況は「構造的な問題」を指摘されています。岩手でも沿岸部では水産加工業が次々に再開していますが、工場を再開するための補助金を申請する際、再開に必要な人件費を最賃の水準で申し込むのが通例だといいます。そのため、再開時の賃金があまりに低く、「震災後に建設業でしのいできた働き盛りの世代が、水産加工業に戻るに戻れないでいる」と話します。

 建設業も同様です。最賃を基準にして入札額を見積もるため、受注額が高くなる宮城の方に業者が向かいがち。建設業は担い手不足が深刻な産業です。岩手の復興への影響が懸念されます。
 「早期に最低時給800円、全国平均1000円」の実現が必要と声が強くなっています。

▼消費増税より関心高く

 人口減少率が福島県に次いでワースト2位の秋田県(最賃は654円)。同県では今年、25市町村中21議会で「最低賃金引き上げ」を求める意見書が採択されました。

 秋田県労連によると、消費税引き上げに反対する意見書が全体の半数程度、米輸送機オスプレイの飛行訓練に関する意見書が17議会の採択ですから、最賃引き上げへの期待の切実さがうかがえます。

 越後屋建一事務局長は「経営者協会など経済団体と懇談する中で、『若者の県外流出が激しい。ある程度の最低賃金の高さを確保しないと若者を地域に引きとめるのは難しい』という意見が多く出された。中小企業への支援強化を含めて地域全体の要求になってきている」と話します。こうした認識は東北各県の自治体に広がっているともいいます。
 最低賃金の大幅引き上げは、東北地方にこそ必要です。

「支払い能力」という呪縛先進国では日本だけ

 最低賃金を決める際に考慮すべき要素として、法律は「労働者の生計費」「賃金」「事業の支払い能力」と定めています。この「支払い能力」が最賃を低く抑える呪縛となっています。先進国では日本だけの仕組みです。

 ILO(国際労働機関)は第135号勧告で、最賃の決め方について「労働者とその家族の必要」「国内賃金の一般的水準」「生計費」などを考慮要素とするよう定めています。この中に「事業の支払い能力」は含まれてはいません。低賃金に依存する企業を基準にすれば、最賃はいつまでたっても小幅な引き上げしかできなくなるので、考慮の要素とすべきでないのは当然でしょう。企業の経営対策は、別の政策で補うべきということです。

 「支払い能力」を考慮する国は、フィリピンやネパール、南アフリカ、コロンビアなど途上国がほとんど。先進国にはありません。

 国連の社会権規約委員会も今春、日本政府に対し、「最低賃金水準を決定する際に考慮される要素を見直す」よう勧告しています。

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