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2013年 7月27日

地域間格差が拡大
日本の最低賃金

少ない中小企業支援  

地域間格差は拡大給料2カ月分もの差に

 最低賃金は近年、従来よりも引き上げ幅が伸びる一方で、皮肉にも地域間格差が拡大しています。低額地域の底上げが焦眉の課題です。

▼人口流出防ぐためにも

 日本の最賃は、中央最低賃金審議会が47都道府県をA~Dの4つのランクに分けて、その年の引き上げ目安を示し、都道府県ごとに改定額を決める仕組みです。Aランクは東京などの都市部で、Dランクは東北や九州、四国に多くあります。

 A~Dの格差は、2005年度の95円から、12年度は163円と倍近くに広がりました。年2000時間働くとして32万円の差。時給1000円以下で働く人にとっては2カ月分にも相当する金額です。

 目安の決定は、その年の賃金上昇率が決め手となるため、農業県の方が低くなりがち。こうした県の生活保護水準は低く、最賃引き上げのバネとして機能しにくいのが実情です。

 総務省統計では、人口減少率が大きい県の最賃は軒並み最低クラス。今以上の過疎化の流れを食い止めるためにもC、Dランクの底上げは待ったなしです。

最賃上がると雇用減る?問われる社会のありよう

 「最低賃金が引き上げられると雇用が減る」。よく聞く決まり文句です。ここで考えたいのは、まじめに働いても暮らせない社会のありようが問われているということです。

▼「影響なし」が最多に

 つい最近まで時給相場を支える最賃は、主婦や学生など家計を補う人々の問題だとして、社会全体の関心は高くありませんでした。しかし、非正規の仕事で生計を立てざるを得ない人が増えた今、放置していては深刻な社会不安を招きかねません。

 全国中小企業団体中央会が、会員企業に最賃が800円以上になる場合の影響を聞いた調査(2010年度)があります。そこでは「ほとんど影響はない」が約半数に上り、2割弱の「大きな影響がある」を大きく引き離しました。

 この2割弱を指して最賃を上げない理由とするのではなく、公正取引の実現や減税、助成金を通じて、中小企業の経営を改善する政策誘導を行い、暮らせない低賃金を根絶することが必要です。

 今年最賃を40%引き上げたタイ政府の狙いは「高付加価値化への転換」。「いつまでも低賃金に甘えていてはだめ」だと、高技術化を図る企業に税金を優遇しています。本来、技術立国である日本こそ手本となりたいものです。

少ない中小企業支援問われる国の姿勢

 海外では最低賃金の引き上げと同時に、減税など中小企業への支援を行っています。日本も2011年度から、時給を計画的に800円以上に引き上げようとする企業を対象にした助成金の支給など、中小企業への支援事業を始めましたが、予算が少なすぎると指摘されています。
 米国は07年、連邦最賃の40%引き上げと併せて、17年までに総額48億ドルに及ぶ中小企業減税も同時に決めました。フランスでは03年、それまで複数あった最賃を最高額で一本化したことに伴い、社会保険料の使用者負担分を軽減する政策が進められました。関連する支出は222億ユーロにも上るといいます。
 かたや日本。11年度に付いたわずか50億円の予算が、年々減額されているのです。一方で、執行額は増えつつあることから、厚労省の担当者は「13年度は予算不足に陥るのでは」と危惧しています。ここでも国の姿勢が問われます。


1000円でGDP4兆アップ/中小企業に恩恵大

 最低賃金の問題を考える際に重要なことは、長らくデフレで停滞する日本経済の再生にとっても、非常に有効な手段だということです。労働団体の研究機関によると、最低時給を全国一律1000円に引き上げた場合、新たに国内生産が約8兆円誘発され、経済の規模を示すGDP(国内総生産)を4兆円(0・8%)押し上げる効果があると試算しています。
 最賃の周辺で暮らす人ほど、収入を消費に多く回します。そのため、減税で高所得者の収入を増やすよりも、内需拡大効果が大きいと言われます。特に、中小企業が比較的多い「商業」や「食料品」「飲食店」への波及効果が高いのが注目すべきポイントです。
 デフレからの脱却には、国内経済の6割を占める消費を温めなければならないのは、今や安倍首相でさえ認めています。2000万人以上いるともみられる時給1000円未満で働く人々の底上げが、最も有効な手立てなのです。

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