京都府職員労働組合 -自治労連-  Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2013年11月28日

業界団体の理解がカギ
広がる公契約条例

「事業者にもプラス」のアピールを

 自治体が発注する公共工事や業務委託で働く人の賃金の下限額を定める「公契約条例」が全国に広がりつつある。山形県山形市や福岡県直方市が来春施行をめざして既に提案したほか、検討中の自治体が相次いでいる。

 その一方で、業界団体の反発で否決されたり、賃金の下限額の設定をめぐる綱引きも生じている。明暗を分かつポイントは、業界団体との合意形成。「ワーキングプア対策だけでなく、公正競争確保など事業者のための仕組みだということをもっと強調して」と関係者は呼びかける。

▲下限額の設定が焦点

 県レベルでは、神奈川、長野、愛知の3県が、要綱案の策定や、制定に向けた検討会の設置で先行している。市区町村では、福岡県直方市が来年4月施行をめざし、12月議会に提案した。東京都世田谷区、愛知県豊橋市、三重県四日市市、京都市、京都府福知山市、兵庫県三木市、同加西市、香川県丸亀市、福岡県北九州市などで、首長が制定を公約したり、何らかの検討組織を設置している。

 全国に広がる一方、業界団体の反発を受け、座礁するケースも。提案から2年越しで審議してきた札幌市は、10月議会で僅差で否決された。入札改善を優先すべきとする建設業団体が反発し、自民、公明、みんなの党などの保守系会派が反対に回ったのである。

 山形市では9月議会に条例案を提案したが、県ビルメンテナンス業協会と警備業界の団体が、公契約職場と他の職場との間で賃金格差が生じるとして慎重対応を要請。継続審議となった。埼玉県川越市でも12年9月、条例が議員提案されたが、こちらも調整不足でその後、撤回した。

 こうした先行例を受け、現在検討中の自治体も慎重さが目立つ。世田谷区と京都市では、賃金の下限額を定めるかどうかで、水面下の綱引きが始まっているという。どちらも、不十分な条例案を急いで出させないよう、労組などの運動側は気をもむ。

▲対決条例にしないこと 

 業界側の異論の多くが、入札制度の改善を優先すべきというものだ。受注額が低く抑えられたまま、労務コストだけが上がることへの警戒感は当然強い。札幌市では最低制限価格を引き上げるなどしたが、理解は得られなかった。

 社団法人神奈川県地方自治研究センターの勝島行正事務局長は「『官製ワーキングプアをなくす』という面が強調され過ぎる傾向がある。業界団体をいかに合意形成の枠に入れていくかが大切。対決条例にしてはならない」と話す。

 公契約条例は賃金の底上げ・底支えをする仕組みであるとともに、地域外からの格安ダンピング大手の参入を防ぐなど、公正競争の確保や、業界の健全な発展に寄与するという機能がある。事業者に十分メリットがあるという点を押し出すべきとの指摘だ。

 2015年4月には一斉地方選挙を迎える。これを好機としつつ、公契約に関わる業界の持続可能な発展について、ともに考える姿勢が必要となっている。

〈メモ〉業界は低賃金に危機感を

 国土交通省が3月末、建設業団体など関係団体に宛てた要請書がある。ダンピング受注の激化が労働者の賃金低下、若年入職者の減少を招いたとし、「このままでは熟練工から若手への技能継承がされないままに技能労働者が減少し、将来の建設産業の存続が危ぐされる」と率直な危機感を表明している。若年層の減少の最大の理由に「全産業平均を26%も下回る給与水準」を指摘した。

 公共工事設計労務単価を今年度から全国平均約15%引き上げたことと併せての要請だった。 国の指摘は、公契約にかかわる産業にも十分あてはまる。業界団体は、低賃金依存が自分たちの産業の存続を脅かしかねないことに対し、入札改善と同様に危機感を持つべきだ。

府職労ニュースインデックスへ