京都府職員労働組合 -自治労連-  Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2013年 6月24日

労働・市民運動を後押し
国連委勧告

生活保護制度など「改悪ストップ」へ手掛かり  

 国連の社会権規約委員会が5月に出した勧告が、労働組合や市民団体の活動を後押ししている。過労死などの労働問題をはじめ、生活保護や男女平等など、幅広い分野の31項目で改善を求めているからだ。安倍政権が進めようとする労働規制緩和や社会保障削減を阻止する手掛かりになっている。

▼過労死遺族、高く評価
 
 「いよいよヤマ場の局面。もう一押しで扉が開くところまできた」。過労死防止基本法制定を求める実行委員会が6月6日に開いた集会の冒頭、委員長を務める森岡孝二・関西大学教授はこう述べた。その理由としたのが、社会権規約委員会が5月17日付に日本政府に出した勧告だ。

 規約委は「国際人権規約」(日本は1979年批准)に基づき、批准国の人権保障の状況を審査している。今回の日本に対する勧告はまず、過労死と長時間労働について懸念を示し、長時間労働を防止する措置の強化を迫った。

 前出の実行委がまとめた基本法案は、国が過労死防止に向けた基本計画を策定するよう義務付け、自治体や企業にも防止対策を取る責任があることを明確化。まさに、勧告と合致する内容だ。

 今月18日には、法制化をめざす超党派の議員連盟結成に向けた準備会も開かれた。17年前に過労死で夫を亡くした寺西笑子さんは「(勧告で)前に進んだ」と評価し、「毎年たくさんの人が過労死で亡くなっている。国は一刻も早く対策を取ってほしい」と語った。

▼生活保護削減を懸念

 社会保障の改悪を止める運動でも、勧告は貴重な援軍となりそうだ。6月5日、生活保護を受けている人ら約200人が厚生労働省に対し、「勧告を踏まえて議論をやり直して」と陳情した。8月から食費や光熱費に相当する「生活扶助費」が最大10%引き下げられ、親族の扶養義務を強化し申請手続きを厳格化する法案も、国会で審議されているためだ。

 勧告は、生活保護の申請手続き簡素化や、給付削減による影響を注視するよう催促。昨年、生活保護を受ける人へのバッシングが相次いだことを念頭に、利用者の尊厳確保も求めた。生活保護問題全国対策会議は「日本政府は逆方向に進もうとしている」と批判のトーンをさらに強める。

 7月に議論が始まる最低賃金についても、勧告は「人たるに値する暮らしができるよう決定方法の見直し」を示した。全労連の伊藤圭一調査局長は「日本の最賃が最低生計費を満たしていないことを国連が批判した。『企業の支払い能力』を考慮しているのは日本だけで、グローバルスタンダードに合わせるべきだ」と強調。その上で「われわれの主張と国連が同じ認識だ。運動の追い風になる」とみている。

▼人権侵害も多く指摘

 勧告は、人権侵害が懸念される社会問題全般にも言及している。

 コリアンタウンで知られる東京・新大久保で相次ぐ在日韓国・朝鮮人へのヘイトスピーチ(憎悪表現)では、「慰安婦」などをおとしめる行為を防ぐ市民教育を要求。政府が再稼働を進めようとする原発についても、安全に関する透明性を確保するよう注文を付けた。

 国際的に大きく遅れたままの男女差別にも触れ、女性を差別するコース別人事や妊娠を理由とした解雇の慣行廃止、セクハラ禁止の立法措置、男女における同一価値労働同一賃金の確保を挙げた。4月末にスイス・ジュネーブの規約委へ直接出向き、差別の実態を訴えたNGO「WWN」の越堂静子代表は「これほどパーフェクトに国際機関から勧告が出されたのは初めて」と絶賛する。

 勧告に法的強制力はないが、政府は規約委への報告義務を負う。これまで「規制緩和」など経済政策に偏りがちな安倍政権。国民が暮らしやすい社会と人権保障を実現することが求められている。

府職労ニュースインデックスへ