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2013年 6月11日

「雇用破壊」の道筋、明確に
規制改革会議の答申

参院選後にさらに拍車  

 安倍政権の下で今年発足した規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)が6月5日、労働規制の見直しを答申しました。夏の参院選を意識した控え目な内容にも見えますが、解雇を容易にし、長時間労働への規制を弱め、派遣労働を一層広げるという「雇用破壊」の道筋は明確に示されています。

▼「企業のため」が基調  

 答申を貫く基調は、「世界で一番企業が活動しやすい国づくり」。ワークライフバランス(仕事と家庭の調和)などの美辞麗句を散りばめていますが、実際のところは、経団連が長年要望してきた政策の「在庫一層セール」ともいうべき様相を呈しています。

 雇用分野では、円滑な労働移動が必要だとし、そのための▽正社員改革▽民間人材ビジネスの規制改革▽セーフティーネット・職業訓練の整備・強化――の三本柱を打ち出しました。

▼〈正社員改革〉

1)ジョブ型正社員

 答申は、職務や勤務地、労働時間を限定する「ジョブ型正社員」という働き方を設定し、その雇用ルールの整備を「正社員改革の第一歩」と位置付けました。

 ワークライフバランス実現のためと言いますが、こうした働き方は現行制度でも可能です。狙いは、会社都合で解雇する際の裁判上のルール、「整理解雇四要件」(解雇の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、労使協議)の骨抜きにあります。

 例えば、工場が移転し仕事や職場がなくなる場合、使用者は配転先を提案するなど、解雇を回避する努力をしなければなりません。しかし、地域や職務を限定した社員に対しては「あなたの仕事はもうありません」のひと言で済みます。

 職務や配転先が限られている分だけ、処遇を低くする理由にもなるでしょう。

 答申の盲点は、正社員の長時間残業、単身赴任を強いる遠隔地配転を当然視していること。この現状を法や行政が追認すれば、正社員の働き方は今以上にきつくなり、法律で救済されにくくなることが懸念されます。

(2)労働時間規制の緩和

 働く時間を労働者が自由に決められる「裁量労働制」の手続き緩和が盛り込まれました。子育てや介護を担う人にとって便利なものにもなりますが、仕事量が多いと逆に過重労働を招く危険をはらんでいます。そのため、制度の対象範囲を厳格に定め、労働局への届け出や報告を義務付けていますが、そのルールを「使いにくいから取っ払ってしまえ」というのです。

 労働時間規制の「適用除外」ルールの見直しも盛り込まれました。当面は、企業が残業代支払いを避けるために用いる「名ばかり管理職」を容認するルールづくりが予想されます。

3)解雇の金銭解決制度

 春先に「導入する、しない」で、首相が朝令暮改の答弁をした「解雇の金銭解決制度」。裁判所が「違法解雇」と判断しても一定の金銭を支払えば、労働者の意に反して職場復帰させなくて済む制度です。
 答申は「丁寧に検討を行っていく必要がある」とし、今後は諸外国の制度の状況をみながら判断していくと控え目の書きぶりですが、これも経団連の長年の要望項目です。参院選後に満を持して提案してくるとみるべきでしょう。

▼〈人材ビジネス改革〉

(1)派遣の規制緩和
 
 年内にもカタを付けてしまおうと手ぐすねを引くのが、労働者派遣制度の見直しです。

 派遣労働のように、雇う人と、使う人が異なる「間接雇用」は戦後長らく禁じられてきました。労働者の権利行使が難しいほか、賃金や労働条件が市場競争に委ねられてどんどん低下していく恐れがあるからです。そのため、1985年に制度が創設された際には、正社員の仕事が派遣労働に置き代えられてはならないという「常用代替防止」原則が確認されました。

 この原則があることで、その後の相次ぐ規制緩和の中でも、派遣期間や受け入れ業務の制限が残されてきました。答申はこの最後の歯止めを取り払おうとしています。

(2)有料職業紹介の拡大

 有料職業紹介の規制緩和も焦点です。あまり注目されませんが、派遣と同様、自公政権と人材ビジネスとの蜜月ぶりをうかがわせる規制緩和です。「2014年度の早期」に結論を出す構えです。

 現行法では、あっせん業者が、求職者から手数料を取るには、700万円を超える年収要件や、経営管理者、科学技術者などに限るという高いハードルが設けられています。

 これは日本が批准するILO(国際労働機関)181号条約で、手数料は企業から取るべきで、求職者から取るべきではないという考え方に立つため。この規制を緩和し、職業紹介事業を人材ビジネスに開放しようというのです。

 求人内容が実態と著しく違うなど悪質なケースでは、ハローワークは是正を指導したり、紹介そのものを中止することができますが、営利事業によるあっせんでは、求人側は大事なお得意先であり、是正を求めるなどの交渉が難しいのではないかとの懸念がつきまといます。

▼〈セーフティーネットなど〉  

 3本目の柱については詳しい記述がありません。ここで紹介したいのは、安倍首相の諮問会議「産業競争力会議」で検討されている「雇用調整助成金の廃止」です。
 この制度は、景気が急激に落ち込んだ際、労働者を休業や教育訓練、出向させることで雇用を守った企業に、その賃金の一部を助成するもの。08年末のリーマン・ショックの際、雇用確保に役立ちました。
 競争力会議では、この助成金を廃止し、「労働移動支援助成金」拡充の財源にあてることが検討されています。企業がリストラ対象の労働者に、民間職業紹介業者を通じて再就職を支援した場合、委託費用の半分を負担する制度です。
 労働者を路頭に迷わせ、人材ビジネスに商機を与える政策といえます。

▼国際原則無視の暴走

 雇用・労働ルールの大転換をもたらす審議なのに、規制改革会議には労働者の代表は一人もいません。雇用分野の報告書をまとめた規制改革会議・雇用ワーキンググループ(WG)の委員は5人で、経済学者の鶴光太郎座長(慶應義塾大学大学院教授)と中日新聞論説副主幹のほか、ニチレイ、新日鉄住金、イー・ウーマンの役員と、使用者側の立場の人物で占められています。労働に関するルールは「政労使の三者で審議し決める」という国際的原則に反すると言わざるを得ません。

 「暴走」はこれにとどまりません。雇用WGは、取りまとめに向けた5月中旬以降の審議で、労働分野を所管する厚生労働省の傍聴を禁止したのです。

 国会軽視もあらわになりました。津田弥太郎参院議員(民主)は参院厚生労働委員会で、同WGの取りまとめ審議の議事録を公開するよう求めたところ、所管する内閣府から「微妙な時期だから」との理由で拒否されたと証言しています。
 これまでの各種政府諮問会議の委員の発言などから、参院選を前に公開を先送りした規制緩和が隠されていることが十分予想されます。8時間労働制を破壊し残業代を支払わなくて済む「ホワイトカラー・エグゼンプション」や、解雇の金銭解決制の導入など、より強力な「規制改革」が控えていると考えるべきでしょう。

 今後、労働政策審議会に舞台を移しますが、これ以上の暴走を許さないよう、世論の監視と、労組の取り組みが求められます。

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