京都府職員労働組合 -自治労連-  Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2013年 2月19日

解雇規制緩和に道開く
規制改革会議が検討 

ゾンビ政策のオンパレード 

 衣の下から鎧(よろい)が見えた――。安倍政権の肝入りで発足した「規制改革会議」(議長・岡素之住友商事相談役)は2月15日、解雇規制の緩和やホワイトカラー・エグゼンプション(残業代ゼロ制度)につながる検討項目を打ち出しました。経団連が毎年政府に提出している「規制改革要望」と重なる点が多いばかりか、それ以上に労働者保護を弱めかねない内容です。

 「混合診療」など国民皆保険制度を掘り崩す制度改悪もそ上に乗せました。どれも、小泉・安倍第一次政権時に世論の猛反対を受けて、お蔵入りせざるをえなかった「ゾンビ政策」のオンパレード。安倍首相が過去の失政を何も反省していないことの表れです。

▼経団連要望とそっくり

 規制改革会議は首相の諮問機関。健康・医療、エネルギー・環境、雇用など4分野について規制を見直す検討項目を示しました。アベノミクス「3本の矢」の一つ、成長戦略に盛り込むといいます。

 雇用分野では13項目を提示しました。このうち、事務や研究開発系の労働時間規制の見直し、解雇無効の際の救済の多様化、医療分野などでの派遣規制の緩和――など8項目が、経団連のこれまでの規制改革要望と重なります。

 事務や研究開発のホワイトカラー労働者については8時間労働制の適用や、残業代支払い義務をなくす法案が06年に検討され、対応をめぐり世論が沸騰。当時の安倍首相は翌年、法案化を断念し、その年の秋に政権も投げ出しました。裁判所が解雇無効と断じても、原職復帰させない「解雇の金銭解決制度」も同年、労働契約法に盛り込むことが狙われましたが、労組の反対が強く、お蔵入りとなったものです。

 労働時間規制を柔軟にする「裁量労働制」の緩和や派遣労働の規制緩和も経団連と同様の文言で盛り込まれています。 

▼賃下げが容易に?
 
 経団連の要望にないものも。一つが「労働条件の変更規制の合理化」です。現行では合理的な理由もないのに、賃金を半分にするなどの大幅削減は認められません。こうした過去の裁判例の考え方が労働契約法の条文となっています。

 これに対し、規制改革会議は「労使の合意があれば、変更後の就業規則の合理性を推定すべき」としており、警戒が必要です。

 勤務地や職種を限定して採用した社員の雇用ルールの策定、現在は学校を通している、高校卒業予定者への求人募集を直接行えるようにすることなども盛り込んでいます。

▼医療をもうけの道具に

 保険外診療と保険診療を併用する「混合診療」にも道を開こうとしています。

 「混合診療」とは、例えばがん治療で、未認可の抗がん剤を自費にして、他の治療は保険診療にするということ。現状では認められていません。

 というのも、現行の医療制度は、国が治療法や薬について効果や安全性を保証し、必要な医療サービスを全国同じ医療費で提供するという原則で運営しているからです。「混合診療」を認めてしまえば、国の責任は後退してしまいます。

 規制改革会議は「先進的な医療技術の恩恵を受けられる」と規制見直しの目的を挙げていますが、逆に、保険で最先端医療を利用できる範囲が狭められ、お金のない庶民は必要な医療を受けられないという事態が生じかねません。

 この規制緩和も小泉政権当時の経団連の要望にありました。いわば医療をもうけの道具にする政策。国民皆保険制度を守る観点から懸念する声が大きく、具体化が断念されたものです。

用語解説〉解雇規制

 労働契約法では、正当な理由のない解雇を認めていません。使用者の都合で解雇するには、(1)必要性があること(2)解雇を避ける努力(3)人選が合理的か(4)十分な労使協議――の要件を満たさなければなりません。

府職労ニュースインデックスへ