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解雇の金銭解決制、三たび浮上 |
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大量リストラに道 |
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安倍首相が国会で「解雇の金銭解決制度」の導入をにおわす答弁をしました。狙いは解雇をしやすくすることで、大量リストラに道を開く危険があります。 ▼お蔵入りの「不良在庫」 この制度は、裁判で「解雇無効」の判決が出ても、企業や団体がその従業員に一定のお金を払えば、職場復帰させずに済む仕組み。安倍政権の成長戦略の一環として急浮上しました。 首相は3月末の国会答弁でいったん導入を否定しましたが、4月3日に一転して導入に含みを持たせる表現に修正しました。参院選の後に導入議論が本格化するのは確実です。 制度は、企業にとって使い勝手のいい労働規制緩和が進められた2000年代に二度、導入が試みられた経緯があります。 当時のうたい文句は「紛争の早期解決」「解決金を得られ、労働者にメリットがある」。年休など正当な権利行使や差別を理由とする解雇を除き、裁判所が「原職復帰は困難」と判断すれば、職場復帰させないことが検討されました。 この時は「働く者を救わずに、なぜ違法なクビ切りをした企業を救うのか」との批判が起こり、結局法案化しませんでした。以来ずっとお蔵入りの「不良在庫」だったのです。 ▼「クビ切り容易に」狙う 当時指摘されたのは乱用の懸念です。「復帰が困難な場合」と一口に言っても、拡大解釈の恐れは消えません。「金さえ払えば解雇できる」との誤ったメッセージを社会に与える恐れもあります。 「労働者にもメリット」も眉唾です。おおむね3カ月以内に解決できる労働審判制度があり、解雇無効を訴える裁判でも解決金で和解するケースは一般的です。メリットがあるのは、裁判で負けても金銭解決の申し立てができるようになる企業や団体の側です。狙いは、クビ切りを容易にすること。この一点に尽きます。 ▼蒼国来も例外じゃない? リストラしたい社員にまともな仕事を与えず、「追い出し部屋」を設け、退職に追い込むような企業には、のどから手が出るほど欲しい制度でしょう。もし裁判で負けても、「あなたの仕事はありません、職場復帰は困難です」と主張し、金銭解決を申し立てれば、一丁上がり。「追い出し部屋」という筋悪の小細工を弄(ろう)する必要もなくなります。 最近、大相撲幕内力士の蒼国来の八百長疑惑による解雇が無効との判決が出され、7月にも原職復帰するニュースが話題になりました。しかし、制度が導入されれば、こうしたケースも例外ではなくなります。使用者の日本相撲協会が「復帰は困難」と主張し、職場の秩序を乱すと裁判所が判断すれば、原職復帰はできなくなります。 ▼企業側の都合露骨に 今回の導入論は、停滞産業から成長産業へ働く人を移動しやすくするための「労働規制緩和」という触れ込みです。「労働者のため」という装いを一応はこらしていた前回と比べ、企業側の都合がより露骨に出ているのが特徴です。 小泉政権時代の2000年以降、大企業は史上空前の利益を上げた一方、国内は労働規制緩和で非正規労働が急増、消費は冷え込みデフレが長期化しました。こうした問題への反省は見られません。解雇を容易にする金銭解決制の導入は、過去の「雇用なき経済成長」の焼き直し。夏の参院選に向け、その狙いを広く知らせる必要があります。 〈用語解説〉労働規制 働く者を保護する規制。一日8時間制を定める労働基準法、就職から退職までの契約を定める労働契約法、派遣労働のルールを定める労働者派遣法などがあります。「働く貧困層」増加に伴い、労働者保護を強める動きが2000年代後半から出ましたが、安倍政権の下で再び弱める方向に変えられようとしています。 |
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