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2013年 5月20日

「正社員は一層きつい働き方に
〈日本労働弁護団・鵜飼良昭会長インタビュー〉

政権の労働規制緩和に危機感  

 政府の規制改革会議のワーキンググループはこのほど、「職務や勤務地、労働時間を限定した正社員」の解雇ルールを検討課題としました。この議論の最大の問題は「正社員はどんな配転命令も拒めず、どんな長時間残業にも応じなければならない」という前提に立っていることです。

▼「第二正社員」で改善せず

 正社員であっても、上限基準を超える無制限の残業は認められません。介護を必要とする扶養家族がいるなどの場合は配転命令を認めないという司法判断も出されています。

 ところが、実際は過労死に至るような長時間労働がまん延し、外国では考えられない「単身赴任」も当たり前のように行われています。本来ならば、家庭も健康も自分の人生をも犠牲にする正社員の働かせ方こそ改善しなければならないはず。しかし、そうした方向性は全く見られません。

 比較的解雇しやすく労働条件が低い「第二正社員」という位置付けの人が増えれば、雇用が不安定で会社に従属的な働き方が広がると同時に、従来の正社員は一層きつい働き方を余儀なくされるでしょう。「お前は彼らと違うのだからもっと仕事しろ」と。

▼日本は解雇規制弱い 

 裁判で「違法解雇」の判決が出ても、金を払えば原職復帰させなくて済む「解雇の金銭解決制」の導入も狙われています。「日本は解雇規制が最も強い国の一つ」といいますが、事実は全く逆。解雇のハードルが低い国です。

 欧州では解雇に合理的な理由を必要とする規制が古くから整備されているのに対し、日本は03年に初めて法律に明記されたばかり。それまでは労働法制の中では基本的に解雇自由でした。中小企業では今も「明日から来なくていい」という乱暴な解雇であふれています。OECD(経済協力開発機構)が解雇規制の強さを示した指標(08年)では、主要30カ国の中でも解雇しやすい国に位置しています。

 労働裁判は(労働審判と個別労働紛争解決制度による調停も含め)年間約7000件弱と極めて少ないのも特徴です。多くが泣き寝入りをしているのが現実です。欧州諸国のように年間数十万件に上るならともかく、日本で金銭解決制を設ける理由はありません。

 それどころか、解雇規制が社会に十分に定着していない下で、「金さえ払えば自由に解雇できる」との誤ったアナウンス効果を及ぼしてしまいます。

 解雇は人権問題でもあります。名誉感情を傷つけられ、自ら命を絶つ人もいるほどに屈辱感を与えるものです。

 次の職に移るための職業訓練や、十分な失業補償など、解雇された人を社会的に支えるインフラが絶対に欠かせません。それがないまま解雇規制を緩めれば深刻な社会不安を招くでしょう。

▼「ともに立ち上がろう」 

 安倍政権の下で、まるで歴史の歯車を逆に動かすかのような状況が生じています。労働規制緩和の弊害が明らかになる中、06年頃から「労働と貧困」の問題が顕在化し、労働者保護を強める方向へ政策転換が行われました。それなのに、かつて規制緩和の旗を振った人たちが政権のブレーンの座に再び座り、反省もなく同じことを繰り返そうとしています。極めて不条理と言わざるを得ません。

 4年前の政権交代では不十分ながらも派遣労働の規制が強化され、困窮者を支える様々な制度が整備されました。しかし、安倍政権はこれらの成果をことごとくつぶそうとしています。

 同政権が進める労働規制緩和は格差と貧困を一層広げるものです。何としても阻止しなければなりません。そのためにもディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現と、労働規制のグローバル・スタンダードを訴えていく必要があります。

 労働組合の皆さんは、ぜひ危機感を持って闘いに立ちあがってほしい。労働弁護団も安心して人間らしく働ける社会をめざして運動を展開していく決意です。。

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