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2013年 8月26日

賃金削減圧力の強まり危惧
自治体職員労組

政府与党の布石、着々と

 総務省は8月、地方公務員の賃金削減の実施状況を公表した。6月議会を終えた段階で、削減を行った自治体は約半数にとどまる。7月1日実施というヤマは越えたが、地方交付税改革を掲げた骨太方針、人件費抑制を掲げる自民党の圧勝など、削減への布石は着々と打たれつつある。秋以降、賃下げへの圧力はさらに強まることが予想される。

「ルール違反」への批判

 同省によると、削減を行った自治体が46%で、実施予定や職員団体との協議中が7%、検討中は21%、予定なしは13%となっている。

 一方、最大の職員組合である自治労が1644組合を対象に行った集計によると、「『削減あり』で妥結した」と答えた組合は46%と、ほぼ国と同様の傾向を示したが、「削減なし」は45%と国を上回った。この差は、削減を市長など特別職や管理職に絞り、一般職員に手を付けなかった自治体の労組が、自治労本部に「削減なし」と答えたことによるものとみられる。自治労連も、約半数が6月議会での条例提案をおしとどめているとしている。

 問題は削減の中身。自治労集計で「『削減あり』で妥結」と答えた751組合のうち、721組合が国の要請通り(平均7・8%など)の削減ではなく、「何らかの緩和措置」を行ったと答えた。実に、9割近い自治体が国の要請通りの削減には従わなかったことになる。

 自治労の徳永秀昭委員長は8月19日に都内で開いた記者会見で、「『国の削減措置は間違っている』と自治体関係者が考えていることの証左だ」と、交付税の配分を人質にした賃金削減という「ルール違反」の手法を批判した。

 地方交付税は地方固有の財源とされ、使途は問われない。さらに、国の職員給与財源が減る中、毎年、半数を超える自治体が独自の賃金削減を行ってきた。その爪痕は非正規職員の増加やメンタル不全の急増などの職場の疲弊となって表れている。

▼賃金削減への布石

 7月1日からの実施というヤマは越えたが、これで終わりではない。一層の人件費削減に向けた布石が打たれつつある。新藤義孝総務相は8月2日、削減未実施の自治体についてペナルティーは考えていないとしながらも、「歳出が適切だったのかどうなのか、そういったことは当然考えていくことになる」と述べ、関係者の眉をひそめさせた。これと前後して、総務省は7月、都道府県と政令指定都市の担当者を呼びつけ、速やかな削減実施を促している。

 参院選では、政策集「Jファイル2013」で一層の総人件費抑制策を表明していた自民党が圧勝し、衆参のねじれを解消。8月8日の人事院報告には、これに歩調を合わせるかのように「給与制度の総合的見直し」が盛り込まれた。

 消費増税の判断が行われる9月を前に、自治労連の猿橋均書記長は「(公務員賃金削減の)最大の眼目は消費増税を前に(国や地方自治体が)身を切ること」と、未実施自治体への圧力の強まりを警戒する。

 さらに大なたは地方交付税にも。リーマン・ショック後の経済危機で創設された、13年度には交付税総額の1割近い額を占める「特別枠」(1兆5000億円)の見直しや、交付税の配分に「行革」というリストラ努力を促す仕組みを設けることが、「骨太方針」に記された。職員給与の総額原資に影響する地方財政計画も見直す方向とみられる。

 労働基本権の回復を行わないまま、政府が賃金削減を職員に押しつけることは、ILO(国際労働機関)条約にも憲法にも反する疑いが濃い。安倍政権が掲げる「デフレ解消」にも逆行している。強行すれば、自治体関係者と国との溝は一層深まることは避けられないだろう。

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