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2013年 6月25日

「交渉からの離脱を選択肢に」
〈TPP交渉参加 産別からの提言〉

フード連合 江森孝至会長  

 ITUC(国際労働組合総連合)は、TPPに公正なルールを求めるキャンペーンをスタートさせ、連合も参加を決めました。連合が6月の中央執行委員会で確認したTPPに対する「当面の対応」方針は、私たちのこれまでの主張を網羅する内容と評価していますが、問題は今後の交渉で国益が守れるかどうかです。

 7月にマレーシアで11日間にわたって行われる交渉では、日本が参加できる期間は実質わずか2日。米国が年内決着をめざす中、次の交渉は10月に予定されているだけです。「日本が参加してもこれまでに決めた内容は変えさせない」という参加国間の合意があるとも言われています。

 日本の主張を入れ込む余地はほとんどないと言わざるを得ません。交渉状況を公開し、国益が守られないと判断した段階で、衆参両院の農林水産委員会で決議したように、「交渉からの離脱」を重要な選択肢として、今後の交渉に挑むべきです。

▼国家対多国籍企業の構図

 日米事前協議では、米国の自動車関税の撤廃延期という高い入場料を支払わされました。さらに、今後は食の安全、保険、投資、政府調達、検疫など9項目の「非関税障壁」(日本の制度や商習慣)について両国が協議します。

 重要なのは、米政府の背後に巨大多国籍企業がいるということ。TPPは「国家対国家」ではなく、自分に有利なルールを作りたい多国籍企業と、国家とが対峙する構図です。企業が投資先政府を提訴できる「ISD条項」はまさにその典型でしょう。

 折しも安倍政権は、労働者保護ルールの緩和や、国民皆保険を壊す「混合診療」の導入を進めようとしています。これらは、多国籍企業の利益増をめざすTPPと一体の動きと見るべきです。日本国内にも規制緩和で利益を得る勢力があり、「外圧」を利用する形で進められようとしています。

 労働者派遣法の改悪や商店街衰退を加速させた大規模小売店舗立地法(新大店法)の制定、郵政民営化の時も同様でした。その後、格差と貧困、地方の疲弊が進む契機となりました。

▼情報公開と国民的議論

 安倍首相が参加を強行しても、それで終わりではありません。先には「国会の批准」というハードルがあります。TPPの異常さは、徹底した秘密交渉にも表れています。ITUCでさえどれほど情報をつかめているのか疑わしいほどです。こんな状況で霞が関発の「公式発表」だけに頼っていてはいけません。NGOなどとも連携して隠されている事実を集める努力が必要です。交渉内容がわかれば問題点も見え、国益を守れるかどうかの判断もできます。影響を受ける農業などに巨額の補償金を注ぎ込むことは、国の財政事情が許さないでしょう。今こそ情報公開と国民的な議論が必要です。

 一昨年に連合内で国公連合や農団労とTPPの問題点を発信していた当時と比べて、問題意識は広がっています。安倍首相が交渉参加を表明した日には、9産別が政府に懸念の払拭(ふっしょく)を求める「共同声明」を発表しました。

 労働組合は社会的な存在です。国のありようを変える恐れが大きいTPPが、自分たちの産業だけでなく、日本社会をどう変えてしまうのか、想像力を働かせることが今の労働運動には必要だと思います。

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