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2013年12月21日

国が「非ブラック企業」認定?
厚労省の若者就労支援事業で

「実態の線引き難しい」の指摘も

 厚生労働省が中堅・中小企業に対し「ブラック企業ではないことの『お墨付き』を与えている」と話題を集めている。労働法令違反のない企業を全国の労働局のホームページに発表し、有給休暇の取得実績や若年者の離職状況などを公開しているためだ。しかし関係者からは「ブラックかどうかの線引きとして使うのは難しい」と懸念する声も出ている。

▲残業や離職状況を公開

 「非ブラック認定」制度と呼ばれているのは、厚労省の「若者応援企業」宣言事業だ。昨年6月に策定された「若者雇用戦略」に基づき、若者と中小企業のミスマッチを解消するため今年4月から始まった。若年者向けに正社員を募集している企業が一定の条件を満たせば、「若者応援企業」として労働局のホームページに社名が公表される。 その基準は、「労働法令に違反していない」「事業主都合による解雇・退職勧奨が行われていない」ことなどと併せ、過去3年分の新卒者の採用実績や離職状況、有休の取得実績、残業時間を開示していることなどの7項目だ。実際に基準を満たしているかどうかを労働基準監督署やハローワークが確認した上で求人票とPRシートを公開している。

 厚労省によると、10月末時点で応援宣言した企業数は全国で4375社。宣言企業限定の就職面接会も開かれており、事業者側は「若者を応援していることを知ってもらう良い機会になった」。若者からも「どういう事業所なのかが分かりやすい」との声が寄せられているという。

▲離職率100%の求人も

 こうした事業が、若者を大量に採用して使い捨てるいわゆるブラック企業を見分ける手段になると報道されている。これに対し国の労働行政の職員でつくる全労働省労働組合の小川洋書記次長は「ブラック企業かどうかの線引きとして使うのは難しい」と指摘する。

 例えば、育児休業の取得実績がゼロでもそれが開示されていれば問題はない。実際、求人票に「育児休業、介護休業、看護休暇の取得実績なし」と明記されているものもある。「基本給13万円台」の低賃金求人や年度によって離職率100%の企業も。さらに「本当は会社都合なのに自主退職に追い込む場合や、若者を使い捨てしていても雇用保険に加入させていないとハローワークで確認は難しい」(小川書記次長)。厚労省も「若者に企業のことを知ってもらうためのマッチング事業だ。ブラック企業対策ではない」と説明する。

▲規制強化でまともな雇用を

 ブラック企業対策として厚労省は9月に電話相談を実施。全国5111事業所の重点監督も行い、法令違反のあった8割の事業所を是正指導した。職場のパワーハラスメント防止に向けたセミナーやリーフレットの配布も行っているが、人手不足で監督・指導が行き届かないのが実態だ。

 小川書記次長は「新事業はブラック企業かどうかを判断する際の参考にはなる」としつつも、「まともな企業を増やすためには、雇用の質を劣化させない労働規制の強化が必要だ」と訴える。その上で、「企業に労働法を守らせる労働基準監督署の体制を強化すべきだ」と話している。

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