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2013年 2月 7日

最賃引き上げに暗雲?
生活保護下げで転機迎える  

「早期に全国800円」の政労使合意も見直しか 

 「ワーキングプア(働く貧困層)」解消の手段として近年注目を集める「地域別最低賃金」が今年、転機を迎える。

 最低賃金法の改正(2007年)以降、引き上げのバネとして機能してきた「生活保護とのかい離の解消」を迫る手法の効果が、生活保護の引き下げで、弱まる恐れが出てきたためだ。最賃額の水準目標を定めた「雇用戦略対話」の政労使合意(10年)が、文言通りであれば、今年、見直し時期を迎えるという事情もある。引き上げ抑制を狙う経営側が手ぐすねを引くなか、「弱肉強食」の新自由主義的政策を特徴とする安倍政権の今後の対応には、警戒が必要だ。

▼二桁アップは困難か

 07年の最低賃金法改正で「生活保護との整合性」が明記され、東日本大震災が発生した11年を除き、毎年二桁の引き上げが行われてきた。現在の全国加重平均は749円。デフレ経済の下で2000年から06年までの6年間はわずか14円の伸びだったのが、それから12年まの6年間では76円も上昇した。

 ところが、安倍政権は1月、新内閣の手始めの仕事として、生活保護費のうち食費など生命維持に必要な生活扶助費を8月から3年間で670億円削減することを決めた。

 生活保護費は毎年上昇するため、最賃はあたかも「逃げ水」を追いかけるかのように引き上げが行われてきたが、この循環に歯止めがかかる恐れが強い。

▼政労使合意も見直しに

 生活保護に加え、最賃引き上げのもう一つの旗印である「雇用戦略対話」も転機を迎える。2020年までの目標として「できる限り早期に全国最低800円」「全国平均1000円をめざす」という、政労使の合意だ。

 この合意には「3年後に必要な見直しを行う」との文言があり、単純にみれば今年がその年にあたる。

 安倍政権が6月までに策定予定である、中長期的な経済財政運営の基本方針「骨太の方針」で、最低賃金がどのように位置づけられるかがポイントになるという。

▼皮肉な事態に

 この政労使合意は「名目3%、実質2%を上回る成長」が前提だった。震災後に経済が落ち込むなか、使用者側は事実上、合意の棚上げを主張し、改定審議にもその影響が及んでいた。

 ところが、政府は13年度の経済見通しで、実質成長率は2・5%程度(名目成長率は2・7%程度)を見込むなど、経済の「回復」を見通している。

 「早期に全国最低800円」「全国平均1000円」をめざす環境が名実ともに整うことが期待されるのに、皮肉にも、政労使合意の先行きが見通せないという事態を迎えつつある。

▼経労委報告もけん制

 経済界も「最賃シフト」をしく。今年の経労委報告は「岐路に立つ最低賃金決定プロセス」と題し、中央最低賃金審議会の目安を上回る地方最賃審での金額改定をけん制した。最賃に多くの紙幅を割く例年にない力の入れようだ。

 昨年の中賃審議では「生活保護制度の見直しがなされれば、最低賃金と生活保護の整合性のあり方について再度議論することが必要」との見解を表明。引き上げ抑制に向け、攻勢に出る可能性が高い。

 安倍政権は、総選挙で一時期「最低賃金規制の廃止」を掲げた「維新の会」のブレーン、竹中平蔵・慶應大学教授を政策づくりの要職に就けた。経営側が最賃の引き上げに警戒感を強めるなか、同政権が自らすすんで底上げ政策を行うとは考えにくい。

 最低賃金は、労働運動の今年の大きな焦点となることが予想される。

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