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2012年 6月29日更新

   憲法原則に立った地方公務員の権利回復を 
地方公務員制度改革にかかわって
 
公務労組連が総務省に「意見書」

 地方公務員・教員の協約締結権回復をはじめ、地方公務員制度改革を検討している総務省は、5月に「地方公務員制度改革について(素案)」を公表、全労連公務員制度改革闘争本部に対しては、5月18日に正式に提示されてきたところです。
 これをうけて、闘争本部では、「素案」の内容について検討し、問題点を取りまとめたうえ、6月28日に総務省に「意見書」を提出しました。


地方公務員制度改革について(素案)」に対する意見

地方公務員の労働基本権をめぐる検討が進められる中、5月11日付「地方公務員制度について(素案)」(以下「素案」)は、非現業一般職への協約締結権回復を始め、消防職員の団結権、協約締結権の回復など、一定の前進面がみられる反面、憲法原則に立った本来あるべき労働者の権利確立との視点から見て、様々な問題点を指摘せざるを得ません。
政府は、昨年の6月以降、地方公務員の自律的労使関係制度の考え方を内外に明らかにしてきましたが、昨年9月に貴職に提出した「地方公務員の労働基本権回復に係る問題について(意見書)」について回答を示されることもなく、当事者たる労働組合との間で、ILOが度々指摘してきた「意味のある話し合い」を十分に行なったとは言えません。
貴職に置かれましては、日本国憲法に立脚し、地方公務・学校の現場の意見や地方自治体の実状を踏まえた制度確立・法案化に向け、当事者たる労働組合との間で正式な交渉を行うよう強く要求します。
なお、今後の議論に資するため、以下、全労連闘争本部として「素案」の内容に対する意見を明らかにします。

                                              記

1.「自律的労使関係制度の措置(総論)」について
「素案」は、「地方公務員についても新たな労使関係制度を設ける」理由に関わって、ILOからの繰り返しての指摘や、「全体の奉仕者」(憲法第15条第2項)をあげているが、その実現のためには、憲法第28条に保障された労働基本権の全面回復こそが必要であり、ILOからの指摘を踏まえるならば、団体行動権(争議権)を含めた地方公務員の権利保障の方向性こそ示されるべきである。
 同時に、憲法第8章(地方自治)にも則り、公務員労働者の政治的行為の制限の見直し、地方公共団体の政策立案・決定及びその過程に対する意見表明権や労使間の協議、重大な瑕疵や基本的人権を侵害する恐れがある場合の職務命令に対する拒否権の保障等についても検討・言及すべきである。
また「素案」は、国家公務員制改革との整合性を図る必要があるとして、すでに国会提出されている国家公務員労働関係法案等を基本的には踏襲したものとなっているが、地方自治体における現行の労使関係の実情を出発点に制度のあり方を検討すべきである。

2.「協約締結権を付与する職員の範囲」について
「協約締結権を付与する職員の範囲」は、住民サービスに直結した事務が主たる地方公共団体においては、非現業一般職員とともに、法適用の違う現業職員や地方公営企業職員が多数存在する実情を踏まえれば、国とは違う制度適用の検討がされてしかるべきである。

したがってその決定にあたっては、労働者の団結権に直結する重要問題として、労働組合の意見を聴取する仕組みを作ること。また、「団体交渉の当事者」にかかる「管理職員等の範囲」についても同様に措置すること。

3.「団体交渉の当事者」について
(1)地方公務員の賃金・労働条件に関わる法制度、政省令、予算措置、全国的な水準などについて、政府(総務省・文科省)と労働組合の連合体との交渉を制度化すること。
(2)「労働組合の認証」は、労働組合の「認証」から「取り消し」という行為を通して、労働組合の活動への監視につながることが懸念される。現行の職員団体登録制度にも類似するものであり、基本的には事前認証制には反対する。なお、労働委員会によるあっせん、調停、仲裁などにあたっては、労働組合法と同様の審査にとどめること。
(3)「素案」で示されている同一地方公共団体職員の過半数要件を設けることや、現行でも制度化されていない外部監査などの要件は、団結権を阻害する立場から認められない。
(4)労働組合との交渉を円滑にすすめる上で、労働組合の運営に必要不可欠な権利が保障されるべきであり、「労働組合のための職員の行為の制限」にある休職専従制度の法定等による制限は行わず、庁舎内での組合事務所の提供などを含め、協約事項とすること。
(5)「使用者側の当事者」について
① 給与支払者と服務監督権者が異なる市区町村立学校における「使用者側の当事者」を「団体交渉の範囲」に応じて明確にすること。
② 学校長に権限が多く委任されている学校職場においては、使用者権限を持つ学校長の当事者性を「団体交渉の範囲」に応じて明確にすること。
(6)同一地方公共団体内において、任命権者(地方公共団体の長)及び、任命権者が異なる職員の労働組合の委任を受けた「交渉団体」による連合交渉及び団体協約の締結を認めること。

4.「団体交渉の範囲等」について(P.4)
(1)「地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項は、引き続き団体交渉の対象とすることができないこととする」ことについて
① 「管理運営事項」を団体交渉の対象から除外することを法定化すれば、当局による交渉拒否など職場での混乱も懸念される。したがって、地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項の処理によって影響を受ける勤務条件は交渉事項とすることを法律上も明確にすること。
② 「地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項」についても、労使合意に基づき、労使間で協議できるよう定めること。
(2)地方公務員法55条にある「交渉の手続き・制限」および、新たな「交渉内容等の公表」については、法定せず、協約事項とすること。

5.「不当労働行為の禁止」について
「不当労働行為事件の審査の手続等」で、不当労働行為の審査・審問、認容、命令が、「公益委員全員をもって構成する合議体」により行われるとされていることに対し、労働組合法24条の規定に基づき、労働者委員の参与や意見表明について定めること。

6.「勤務条件の決定原則等」について
(1)「自律的労使関係」を構築する立場から、団体交渉による労働条件決定への過度な制限につながる制度設計は、極力排除されなければならず、本来、地方公務員法にある「情勢適応」(14条)、「職階制」(23条)、「職務給」(24条)等の「勤務条件の決定原則」を引き続き法定することについては、見直しをはかるべきである。具体的には、23条は廃止し、14条・24条について労働基本権回復の段階に合わせた法改正の方向を示すこと。
(2)当分の間、労使交渉における参考指標として、公労使参加により透明性、信頼性を担保した民間賃金の調査を実施すること。

7.「団体協約の効力」について
(1)「新たな労使関係制度」を実効あるものとするには、使用者及び議会による一方的な条例制定や修正が強行されることを避ける必要がある。このため、使用者に議案提出の義務を課すこととあわせ、議会が団体協約の成立に努力することや、議決されなかった場合に、労使交渉に差し戻すことについて法定すること。最低でも、地公企労法8・9・10条同様の規定とすること。
(2)地方公務員法25条3項の諸規定を法定するにあたり、あくまで条例事項は基準にとどめ、詳細は規則事項とするよう見直すこと。具体的には、地公企法38条4項の記述にとどめること。

8.「交渉不調の場合の調整システム」について(
 調停、仲裁の開始要件について、一方の当事者である地方公共団体の長のみによる請求は認めないこと。

9.「人事行政に関する第三者機関」について(P.9)
 第三者機関のより高度な公正性、信頼性を確保するため、人事委員会に対する労働組合の意見表明について定めること。

10.「能力及び実績に基づく人事管理」「退職管理の適正の確保」について
 これらは、憲法・地方自治法が求める「地方自治の本旨」の実現にとって、今後の公務員制度を左右する重大な問題を持つものであり、2007年の通常国会に提出、廃案になったことを踏まえれば、「素案」に盛り込まれたこと自体、労働組合を含め、自治体関係者の理解が得られるものとは考えられない。
当面、法案化は見送り、あらためて、「改正」後5年が経過した国家公務員制度の検証、全国の地方自治体での制度導入や運用の状況や課題、民間における人事管理の動向の把握、労働組合との意見交換など、慎重な検討を求める。

11.「施行日」について 法律の施行日は、一般職員、消防職員とも国家公務員と同様とすること。
                                                     以 上

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