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2012年 4月16日更新

         借金も地方に押し付けか?
地域主権改革を問う(上)
 
「出先機関改革」の隠された狙い

 主な国道や一級河川の整備・管理は国土交通省の地方整備局と事務所・出張所が担当している。こうした出先機関の業務を国から地方に移し替えようという流れが「地域主権改革」によって強まってきたが、地方に移されるのは、出先機関業務と道路や河川ばかりではない。この問題を追及している国土交通労組の高津公明副委員長は「道路など社会資本の整備・管理のために発行した建設国債、つまり国の借金も地方に押し付けられることになるのではないか」と指摘し、警鐘を鳴らしている。

 「国の出先機関改革」は、政府による「地域主権改革」の一環。地方整備局などの事務と権限を、ブロック単位でつくる自治体の組織に丸ごと譲り渡すというものだ。 

 橋下徹大阪市長が府知事時代につくった関西広域連合は「国でやるより住民に身近な行政ができる」と述べ、出先機関の受け皿として名乗りを上げている。
 地方がやれば、そんなにうまくいくのだろうか。

▼国の債務を軽減?

 実は、4年前の2008年に政府内の「道州制ビジョン懇談会」が、こんな検討を行っていた。
 国の資産を地方(道州)に売却して、国の債務を軽減してはどうか――。この提案をめぐっては、その後1年間議論された。主な意見は次の通り。
 「(資産は)道州が時価で買い取り、道州債で償還すべき」
 「道州が(資産を)買い取るということは、国の借金を道州に押し付け(ることとなり)、発行済みの地方債への影響が大きい」
 「建設国債については、資産の移管と同時に債務も移管すべき」
 道州は、今の広域連合と同じものと見ていい。この議論のポイントは、国の資産を地方に譲り渡すなら、当然に債務もセットですよということだ。資産だけを自治体が譲り受けて、借金は国でよろしくなんてことにはなりません、と言っているのだ。
 この議論は、結論が出ないまま今日に至っている。 

 だが、3月16日には内閣府の地域主権戦略室が「国の出先機関の事務・権限のブロック単位での移譲に係る特例制度(基本構成案)」を提案。そこで「権利義務の承継」を改めてうたっている。この「義務」がくせものであり、今後の推移を注意深く見ておく必要がある。

▼「まさか」では済まない

 「借金が地方に押し付けられる」というと、まさかと思う人もいるだろう。だが、地方自治体の世界では珍しいことではない。
 例えば、2010年4月に政令指定都市になった神奈川県の相模原市。県が相模原市の地域で整備した道路が市に移されている。その際、関連する県債残高1640億円(利息を含む)も同時に移されたのだ。  
 神奈川県職労連の担当者は「道路管理などを移譲するときに、県債を移譲するのは相模原市のケースに限ったことではない」と述べている。

▼借金のつけは住民に

 政府の「地域主権戦略会議」では、これまで借金の移譲問題は前面に出てきていない。なぜなのか。
 国土交通労組の高津副委員長はこう見ている。

 「建設国債の残高は約252兆円もある。政府が国の借金を地方に押し付けると言った瞬間に地方が反発し、地域主権改革を進められなくなるからだ。デメリットは見せず、メリットだけを宣伝するやり方が行われている」
 地域主権改革で地方は良くなると言われる。しかし、借金が移譲されたとき、そのつけを払わされるのは住民自身である。

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