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2012年 4月16日更新

      「不正防止」の名目で福祉事務所への警察官OB配置
生活保護利用者を犯罪者扱い
 
配置自治体での効果は不透明

 生活保護の申請窓口である地方自治体の福祉事務所に警察官OBの配置が進められている。生活保護件数が過去最高を更新し続けているなか、厚生労働省などは「悪質な不正受給を防止するため」と説明しているが、効果は不透明。むしろ生活困窮者の申請に悪影響を及ぼすおそれがあるなど疑問が尽きない。

▼74自治体で導入済み

 厚労省は3月1日に開いた社会・援護局課長会議で生活保護の不正受給対策や暴力団の早期発見に効果があるとして、「警察官OBを福祉事務所内に配置すること」を積極的に検討するよう指示した。既に札幌や仙台、立川、大阪、鹿児島など74の自治体(2010年度)で警官OBを活用しているという。費用は全額国の負担だ。

▼ケースワーカーの増員を

 しかし、警官OB配置には現場から疑問の声が上がっている。今年度からOB4人を配置した横浜市では、市当局が「対応困難者対策のため」「ケースワーカーの負担軽減になる」と理由を説明した。これに対し鶴見区のケースワーカー、高井一聴さんは「対応が困難なケースでも相談に当たるのが私たちの仕事だ。負担軽減と言うのならケースワーカーを増やすのが筋だ」と反論する。

▼不正受給はまれな事例

 確かに近年不正受給件数は増加傾向にあり、10年度は2万5355件(約129億円)に上る。しかし同年度の不正受給世帯は全体の1・8%。受給額では0・38%に過ぎない。大半の利用者は真面目に生活しているのが実態だ。法律家などでつくる「生活保護問題全国対策会議」によると、不正とされるものの中には、高校生が部活動に必要な費用を捻出するためのアルバイト代が未申告だったという事例も少なくない。申告さえすれば収入から除外されるため、悪質性は低い。一般に福祉事務所の多くは町の中心部にあり、最寄りの警察署から現役の警官を呼べば十分間に合うはずだ。

▼利用者を「虫けら」扱い

 警官OB配置で「生活困窮者が福祉事務所から足を遠のかせることになる」との懸念もある。警官OBを配置している大阪・豊中市福祉事務所では09年10月、保護費の支給遅れに抗議した利用者に対し「虫けら」などと暴言を吐く事件が発生した。

 前出の高井さんは生活保護に関するノウハウがない犯罪捜査の元プロを呼んでも、「保護利用者のためにはならない」と言い切る。利用者からは「まるで犯罪者扱いだ」と戸惑いの声も出ている。

 警官OB配置は生活保護利用者にとって、百害あって一利なしの対策だ。

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