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「生活の質を変えられる」 |
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「再生可能エネルギーの現場」 |
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1953年に都留市の「元気くん2号」の場所にあった発電所が廃止された例から分かるように、小水力が低迷してきた背景には、戦後のエネルギー政策が大型水力、火力、原子力に移り変わっていったことがある。今はそのせいで、水車の国内メーカーも少なく、人材も足りないという。 ▼地域経済支える道具に そうした厳しいなかで、日本小水力発電(山梨県北杜市)は先駆者になろうとしている。「小水力は過疎化、高齢化が進む地域を変える有望な道具になり得る」(事業統括部長の一ノ瀬五男さん)と考えているからだ。 アイデアはたくさんある。 発電所の建設工事そのものは、一般の建設業者でも施工できるという。発電可能な地点を探す調査と技術設計ができる日本小水力発電と建設業者がタッグを組めば、低迷続きの公共事業に代わる新たなビジネスを生み出せる。建設業の活性化は、地域経済にとって大きなプラスとなるはずだ。 地域のあちこちに発電所があれば、地方で暮らす人たちを手助けできる。 例えば、各地区に融雪ヒーターを置き、発電所がつくる電気で動かせば、冬場の雪かきの負担を減らせる。重油の値上がりに苦しむハウス栽培にも電気を回せば、地方経済の基盤である農業の下支えになる。発電所ごとに充電設備があれば、電気自動車の普及にも一役買うだろう。いわば「電気のコンビニエンスストア」の誕生であり、昔流に言えば「至るところにオラが電気」がある社会をつくれる。 12年7月から始まるFIT制(再生可能エネルギー固定価格買い取り制度)は、こうした社会を実現するきっかけになるかもしれない。小水力の場合、200kW未満の施設は1kW当たり35・7円で電力会社に売電できる。この価格帯は水車を一般的な寿命である20年稼働させれば、小規模な50kW級の施設でも採算が見込めるという。 ▼先人の事業を継承 「私はもともと電力業界にいた人間で、定年まで東京の会社で働いてきた。満員電車で毎日通勤する生活でストレスがたまり、体調が悪くなるときもあった。でも今の会社では健康的に暮らせる。インターネットの時代なので地方で働く不便も感じない」 一ノ瀬さんはこう語ると、日本で再生可能エネルギーが果たす役割を展望した。 「右肩上がりの経済成長が見込めないならば、生活の質や価値観を見直さないと。大量消費ではない暮らしを良しとする意識に変われば、小水力は役に立つ」 話を終えると、一ノ瀬さんは会社の近くにある「村山六ヶ村堰」などの小水力発電所を案内し、流れる農業用水が江戸時代の村人たちがときに命を賭してつくりあげたものであると教えてくれた。 先人が残した生活の糧を新しい形で引き継いでいく。「再生可能」の本当の意味がここにある気がした。(シリーズは終わり。これまでの記事は出版化する予定です) |
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