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2012年 5月18日

水利権が高いハードルに 
小水力発電の秘めたちから(中)

建設に立ちはだかる高い壁 

 日本小水力発電の一ノ瀬五男さんは、小水力発電所を建てられるまでの段取りを一から説明し始めた。

▼綿密な下調べ必要

 まずは、地域の河川や水路を見て歩き、適性のある地点を調べる。そこから採算を含めて実現性がある地点を絞り込むが、最終的には1地点しか残らないケースも多いという。

 出力(キロワット)=9・8(係数)×落差(メートル)×流量(立方メートル毎秒)×効率(水車と発電機の効率)

 これは、水力発電所の技術設計をする際に用いる計算式だ。ごく端的に言えば、得られる電力は水の落差と流量で決まるので、地点ごとに最適な水車を組み合わる必要があるということだ。

 前出の都留市の「元気くん」は、家中川の落差の低さに合う「開放型」。さらに地点ごとの特徴を踏まえて、開放型のなかから「下掛け(1号)」「上掛け(2号)」「らせん(3号)」と別々の水車が置かれている。北杜市の「村山六ヶ所堰」は、比較的落差の高い地点に向く「フランシス水車」だ。

▼技術面より社会的規制

 ただ、技術面でOKでも、社会的な問題を取り除かなければ、発電所は建てられない。特に高いハードルは、川の水を使う権利を決めている水利権の扱いだ。

 河川法などの法律は、1級河川の水利権は国土交通省、2級河川は都道府県、その他は市町村にあると定めている。民間企業が川で発電するのは目的外使用とされ、許可をもらうにはダムなどを利用した大型水力とほぼ同じ手続きがいる。農業用水についても、流域の住民が慣行として水利権を持っており、同意を得ることはたやすくない。

 これらの課題を順調に乗り越えても、調査から完成するまでには最短でも3年はかかるという。

▼ノウハウがあっても

 稼働後も電力業界の妙なルールに悩まされる。

 電力会社は「周波数の安定」を名目に、送電線に接続している小水力の事業者に「アンシラリーサービス料」というペナルティーの支払いを求めている。東京電力の場合は1kW当たり月約36円で、100kWの発電所では月3600円ほどの負担だ。ところが、同じ再生エネでも太陽光や風力では支払いを原則免除されているのだ。

 これでは大企業はともかく、資金力に乏しい中小企業は行政から補助金を出されても、発電所の建設や運営は相当難しい。日本小水力発電の水車の納入先は、自ら水利権を持つ自治体がほとんど。2002年に設立し、ノウハウを持つ同社でさえも自前で売電する発電所をなかなか持てずにいる。(つづく)        


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