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2012年 4月19日

観光支える地熱発電所(上) 
「再生可能エネルギーの現場」

自前の電力、経営の礎に 

 夜の闇に浮かび上がった動物たちが、訪れた人たちの心を和ませていた。
 2頭の馬に引かれる馬車の近くでスクッと立ち上がる野うさぎたちや、小さな池を飛び交う数羽の鶴。雪だるまとじゃれ合う白クマの先には、木々に群がるキリンやシマウマの姿も見える。

▼使用電力の半分賄う

 実は、動物たちはLED(発光ダイオード)電球によるイルミネーションでつくられたものだ。大分県の別府温泉にある「杉乃井ホテル」が、宿泊客へのサービスとして毎夜ともしている。

 水着で入れる露天温泉施設の名物は、午後7時から10時までの4回にわたる噴水ショーだ。七色の光や音を織り交ぜた約15分間のパフォーマンスは、客たちを飽きさせない。ホテルにはこれ以外にも、本業真っ青のゲームセンターやボウリング場がある。

 節電や省エネが盛んに叫ばれる今、電気をこれだけふんだんに使えるのは、地熱発電所を自前で持っているからだ。出力は1900キロワット。全施設で使う電力量の半分を賄っている。

▼高い客室稼働率生む

 「杉乃井ホテル&リゾート」ダイレクトマーケティング部長の東健治さんは、計592の客室の稼働率が年間平均94%という高い実績を残せているのも「地熱発電所のおかげ」と言う。

 「電力料金を抑えられる分、その資金を広告や宣伝に回せるので、お客さまを呼ぶことができる。イルミネーションや噴水ショーは、リピーターを集めるのにとても効果的です」

 宿泊客増加が別府の観光振興とイコールになることはほぼ間違いない。さらに、地元へ貢献できそうなのが災害時だ。

 ホテルは地盤の固い高台にあるので、万が一、市内が大きな地震や津波に襲われても、市民や観光客を多く受け入れることも可能だ。九州電力からの電気が来なくても、施設は停電しない。避難所にはうってつけである。

▼客層拡大の切り札に

 杉乃井では、急速に進む高齢化に対応しようと、長期滞在型の温泉施設の建設を検討している。西日本に偏りがちな客層を新たに掘り起こすためで、そのキャッチフレーズとなるのも地熱だ。

 「首都圏の人たちに、自然エネルギーを生かしたリゾート施設であるとアピールしたいですね」(東さん)

 事業を拡大すれば使用電力も当然増えるので、発電所の能力を上げた方がよい。だが、そうは問屋が卸さないどころか、日ごろの運営や管理も並大抵ではないという。                  


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