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2012年 7月 5日

「再生エネ普及へ電力市場変えよ」 
スウェーデン前エネルギー庁長官

電力会社の独占体制を問題視  

 スウェーデンのトーマス・コーベリエル前エネルギー庁長官がこのほど都内で講演し、固定価格買い取り制度が始まったばかりの日本で再生可能エネルギー発電を伸ばすには「電力市場の透明化が欠かせない」と訴えた。コーベリエル氏は昨年、長官職を任期半ばで辞し、日本で設立された「自然エネルギー財団」の理事長に就任している。

▼送電網の充実がカギ

 講演会は、国会議員や報道関係者らを集めて開かれた。前長官はまず、世界各国が再生エネの普及に大きな力を注いでいることを伝えた。特に中国では、新設された風力発電施設の合計容量が11年だけで60GW(ギガワット、1GW=100万kW)に達し、太陽光についても同年だけでアジア太平洋地域の市場を半分以上占めるまでに急成長しているという。

 再生エネを早くから導入している欧州では、風力や太陽光だけでなく、バイオマス発電も活発だという。その過程で生まれるメタノールを燃料にして、バスなどの公共交通機関を動かしている事例も紹介した。

 欧州で再生エネ発電が盛んな背景には、ほぼ全域が送電網で結ばれていることをポイントに挙げた。

 送電網には、あらゆる電源が接続されており、太陽光や風力の弱点である天候に左右される面を火力や水力、バイオマスでカバーし、電力の安定供給を実現しているという。風や日光といった自然エネルギーの「仕入れ値」はもともとゼロなので、風が吹いて日が照っている間は、発電コストが押し下げられて、電気料金も安くなるという。

▼「発送電分離で透明化を」

 前長官は、こうした電力市場が築き上げられたきっかけは、90年代半ばから実現されていった「発送電分離」にあると指摘した。

 欧州では発電と送電だけでなく、家庭や企業に直接電気を送り届ける「配電」も分けられている国や地域が少なくないという。スウェーデンでは送電会社が国有化されているうえに、それを監視する規制組織も政府から独立して存在し、送電網の利用で不公平があれば、事業者が申し立てられる仕組みもあるという。

 そのため、事業者の形態は、発電と配電を兼ねているところや、よそから電気を調達して配電する会社などさまざま。日本では原則、一般家庭は電力会社から電気を買うほかないが、欧州では数ある事業者のなかから「料金」や「どんな手段で発電したか」などの基準で選んで契約を結べるという。

 そのうえで前長官は「発送電分離によって電力市場を透明化することに価値がある。1日当たりの発電コストや、年間で見た場合にどの発電が高いのかという情報がオープンになる。(政府は)それに基づいた政策も取れる」と強調。日本では電力会社だけが市場の情報や知識、技術を独り占めしているために「再生エネは発電コストが高く、基幹エネルギーにはなり得ない」というような、欧州の実例から見れば誤った認識が広まっているとの見方を示した。                                                              

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