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2012年 5月 8日

事故起きれば住民は袋小路に 
大飯原発 緊急レポート

根深い地元の依存体質 

 関西電力大飯原発の再稼働に向けて、地元の福井県では手続きが着々と進んでいる。立地するおおい町の町長は「安全が大前提」と言うが、重大な放射能漏れ事故が起きたら、住民の命と暮らしを守れるのか。町を歩いて確かめてみた。(半島の先端にある大飯原発。町民も目にすることは難しい。写真)

▼山に隠れて姿見えず

 地元以外の人には意外だが、関係者を除いては関電の許可なしに大飯原発を近くで見ることはまず不可能だ。町北部の大島半島の先端にあり、山に囲まれた谷に建てられているためだ。空と海を除けば、約5キロ東に離れた対岸の小浜市から眺めるしかない。

 敷地のすぐそばには、釣り客や原発作業員向けの旅館が並び、田畑も広がっている。もし、原発のトラブルが起きても音が聞こえなければ、住民は町からの連絡やテレビで知ることになるだろう。ただし、現場の混乱で情報伝達が遅れそうなのは、福島第一の事故で分かった通りだ。

▼避難路断たれる危険

 半島と町中心部は、全長743メートルの「青戸の大橋」で結ばれている。海の上に架かる橋は、住民や原発関係者にとっては貴重な交通路だ。

 だが、橋は地震や津波、悪天候に見舞われても渡れる保証はない。残るルートは西隣の高浜町へ迂回(うかい)する県道だが、高浜にも原発があり、やはりトラブルで近付けないかもしれない。半島の先と大橋や迂回路の間には複数のトンネルもあり、地震で崩落すれば、住民は原発ともども孤立するという最悪の事態も招きかねない。

 危ないのは中心部や隣接自治体の住民も同じだ。

 彼らの最重要の避難路は、敦賀市と京都府を東西に結ぶ国道27号線。だが、大半は片側1車線で、一斉に車で逃げようとすれば渋滞は必至だ。今年1月の大雪で交通がマヒしたような事態が重なれば、身動きすら取れなくなるだろう。

▼観光客は置き去りに? 

 おおい町など若狭地方が観光地であることも忘れてはいけない。
 釣り客が年中訪れており、夏には大勢の海水浴客も来る。京都からの男性釣り客は「大事故が起きたら逃げられへん」と苦笑いした。
 極めつけは、オフサイトセンターが原発から8キロしか離れていない問題だ。緊急時には国、自治体、電力会社が集まって対策を打つ拠点になるはずだが、センターは海にも面していた。放射能うんぬんの前に、津波で壊れるかもしれない。

▼町民も不安隠せず

 「国の安全対策が分かりづらい」「耐震性も心配」

 4月26日夜におおい町が主催した説明会で、町民は次々と不安を訴えた。「原発停止で雇用が減れば過疎化する」と再稼働に賛成する人も、安全への心配を口にした。反対デモの参加者ならともかく、原発と共生してきた地元からこうした声が公然と上がるのは福島の事故前にはあり得なかったはずだ。

 これに対し、説明役だった経済産業省の柳沢光美副大臣は「福島のような炉心溶融は起こさない」「再稼働がなければ関西の電力がひっ迫する」と繰り返すばかり。今のままでは安全面をクリアできないので、こう話すしかないにしても、住民の納得を得るにはあまりにも無策だった。

▼「だけど義理がある」

 ところが、時岡忍町長は1回きりの説明会で、再稼働の判断を下そうとしている。常識では理解しづらいが、町の現実に照らせば不自然とは言い切れない。

 国道沿いにある町の電光掲示板では、原発の仕組みや安全を宣伝する映像が終始流されていた。ほかの立地場所では、電力会社のPR館は原発敷地内にあるケースがほとんどだが、おおい町には中心部にも別の施設がある。その周辺には国や関電の「原発マネー」によるヨットハーバーやホテル、観光施設も建てられている。

 半島にある旅館や中心部のビジネスホテルは、原発が停止中にもかかわらず、作業員の宿泊でほぼ満員。旅館経営者の一人が「われわれは原発や電力会社に義理がある」と言う通り、原発とは切っても切れない関係なのだ。

 原発が見えないけどすぐそばにある畑で農作業をしていた女性に「事故が怖くないか」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

 「そんなこと言ったってあんた、家も原発もここにあるんでね」           


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