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2012年10月 2日

近畿含め国内7ルートで飛行訓練 
(上)なぜ日本の上空で飛ぶのか 

オスプレイ本格配備

 在日米軍は10月1日、海兵隊岩国基地(山口県)で試験飛行していた新型輸送機MV22オスプレイを沖縄県宜野湾市の普天間基地に移し、本格的な配備・運用を始めました。世論の強い反発があるのに、日米両政府はなぜ強行に事を進めるのか。一から整理して考えてみましょう。

(1)どんな輸送機か?

 オスプレイという名前は、猛きん類のタカの一種である「ミサゴ」が由来。垂直に離着陸するのが特徴で、両翼にあるプロペラの向きを変えながら飛行します。具体的にはプロペラを翼の上に掲げる「ヘリモード」や、翼の前に置く「飛行モード」、両モードを切り替える「転換モード」があります。

 あくまで輸送機なので、すでに国内配備されている戦闘機のような能力は低いといえますが、それでも現在の主力輸送機「CH―46」と比べて速度で2倍、積載重量3倍、飛行距離も5~6倍。そのため、米軍や防衛省は「配備されれば周辺諸国に対する抑止力を高められる」とアピールしています。

(2)何が危険なのか?

 しかし、オスプレイは1989年の初飛行以来、乗組員の死亡や負傷を含む墜落事故を立て続けに起こしています。今年に入っても、4月に西アフリカのモロッコで、6月には米フロリダ州で訓練中に墜落し、計9人が死傷しました。

 米国防総省は、二つの事故原因を「人為的ミス」と日本政府に報告。政府も全面的に受け入れ、今回の配備と相成りました。しかし、オスプレイの構造に詳しい専門家らは「特に転換モードで飛ぶときが墜落しやすい」と警告しています。

 連合通信の取材では、沖縄に駐留する米軍兵士から「オスプレイは操縦が複雑なので乗りたくない。(日本人が)反対するのは正しい」という話も。実際、米本土やハワイでは、墜落の危険だけでなく騒音による環境悪化を懸念した住民の反対で飛行できなくなったいきさつがあります。米軍が日本で飛ばすのはこうした事情もあるようです。

(3)どう運用される?

 日本では、周辺に学校など121もの公共施設がある普天間基地を本拠地に、13機のオスプレイが運用されます。注意すべきは、沖縄だけではなく日本各地の上空を飛び交うこと。米軍は少なくとも東北、信越、近畿、四国、中国、九州の計7ルートで低空飛行訓練を行う計画を立てていることが分かっています。

 これ以外の地域でも、オスプレイは飛ぶケースもあり得ます。計画では飛行訓練の拠点として静岡県の「キャンプ富士」が挙がっており、各ルートに向かうには首都圏の上空を飛ばないとは限らないからです。しかも、計画は全ぼうが明らかになっていません。

 日米合同委員会は、運用について「低空訓練は高度150メートル以上に制限」「夜間や早朝の騒音に配慮」「転換モードの飛行は米軍施設区域外では行わない」「人口密集地はできるだけ飛行しない」とするルールで合意しました。

 しかし、これで安心かといえば答えはノー。日本政府の「安全宣言」の後、9月21日に始まった岩国基地周辺での試験飛行では、住宅地上空を飛行していたという目撃が複数寄せられています。普天間基地周辺では、以前から同じようなルールはあるものの、違反が「例外」としてまかり通ってきたのが実情。だからこそ、今回の配備に沖縄の人たちが猛反対しているのです。軍事に詳しい評論家の前田哲男さんも「米軍が合意を守った試しはない」と指摘しています。
                                          

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