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2012年 5月18日

条件整備の努力すら怠る政府 
大飯原発の再稼働問題

市民は批判「道理がない」 

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働をめぐる政府と市民側との交渉が5月15日、国会内で行われた。市民側は「原子力規制庁が発足していない」と指摘し、事故発生時の避難ルートが未整備であることなども問いただしたが、再稼働を進めたい政府は十分な回答を示せなかった。

 市民側は「グリーン・アクション」や「原発設置反対小浜市民の会」など12団体が参加。政府側は経済産業、文部科学省の担当者が出席した。

▼規制庁発足前なのに

 原子力規制庁は、国会の関連法案の審議が進んでいない影響で、予定の4月を過ぎても発足していない。規制庁は、政府が再稼働の条件としてきたストレステスト1次評価の確認を担うため、福島の事故を防げなかった原子力安全・保安院と原子力安全委員会が確認した大飯3、4号だけが別の基準で判断されようとしている。

 市民側は「規制庁の発足前に再稼働を決めるのはおかしい」と追及。これに対し、政府側は「行政の空白をつくってはいけない。首相ら4大臣の判断基準で決める」と繰り返した。

▼避難路の完成は未定

 半島の先にある大飯原発が重大事故を起こした場合、住民の主な避難路はトンネルと橋がある片側1車線の県道に限られている。地震などで道路が崩落すれば、住民が半島で孤立する危険がある。

 政府側は「今年度予算で県道の複線化の調査費を付けた」と強調したが、その完成時期を問われると「未定」と回答。住民の被曝を極力抑える防護服やヨウ素材の配布数も「福井県が計画中」と言及を避けた。

 その一方で、保安院の担当者らは「対策は不断の努力で進める。再稼働の前提ではない」と明言。市民側は「事故が起きないという考えで事を進めている」と批判した。

▼立地住民を干上がらせ?

 地元のおおい町では、原発停止による作業員の減少や、それに伴う旅館宿泊の低迷などから、雇用や経済への影響が心配されている。4月26日の町主催の住民説明会で、資源エネルギー庁の電力・ガス事業部長は「雇用調整(助成)金などを活用していくことを考えているが、それでも足りない。知恵を絞りたい」と対策を約束した。

 だが、約3週間後となるこの日の交渉で資エネ庁の担当者は「現地調査もしていない」と発言。市民側は「再稼働しないと干上がるので賛成するしかないと、町民に思わせようとしている」といぶかる声が上がった。

▼「地元」の範囲も狭める

 京都府、滋賀県は再稼働に反対し、大阪府と大阪市も両府県に歩調を合わせている。5月1日におおい町の隣である小浜市で開かれた住民説明会でも反対意見が続出した。

 こうした周辺自治体に対し、政府は「一定の理解」を得るとの立場。関電と再稼働の合意を含めた安全協定を結ぶ福井県とおおい町よりも軽視している。

 市民側は「重大事故で大きな被害を受ける小浜市も同町並みの協定にすべき」と見解をただしたが、政府側は「協定は事業者と自治体が結ぶもの」と関与を拒否。市民の一人、小浜市の中嶌哲演住職は交渉をこう総括した。

 「条件整備が整っていない。再稼働だけをお願いされても道理がない」        


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