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2012年 11月 8日

生活保護引き下げが正念場 
日弁連などが反対運動

「餓死や孤立死を増やす恐れ」

 生活保護制度の「最低基準」をめぐる攻防がヤマ場を迎えている。7月時点で保護受給者数が212万人と過去最多となるなか、政府は基準引き下げに向けて検討を進めている。一方、日本弁護士連合会(日弁連)や市民団体などは「基準を引き下げれば餓死や孤立死が増える」と反発。引き下げ阻止の運動を強めている。

▼保護予算、仕分けへ

 「生活保護予算が増えているなか、より効果的な制度改革に向けて新仕分けで専門家も入れて議論したい」。岡田克也副総理は11月5日、都内で記者団にこう語り、2013年度保護予算の概算要求3兆円(国庫負担分)を16日から始まる「新仕分け」の対象にする考えを示した。「受給者の自立を妨げる仕組みや必要性の薄いものがあれば見直す」とも述べ、予算削減に意欲を見せた。

 昨年11月の「政策提言仕分け」では、保護基準が年金や最低賃金の水準を上回っていることに「受給者の就労意欲を削ぐ」などの意見が相次ぎ、基準引き下げを求める提言が出された。今回も同じ結論になる可能性が高い。

▼基準見直し議論進む

 政府は引き下げへの環境づくりを着々と進めている。7月に発表した「生活支援戦略」の中間まとめは、保護受給者の生活水準を下回る低所得層がいることを理由に見直す方針を表明。年内に結論を出す方向で、厚生労働省の審議会(保護基準部会)で見直し議論を進めている。

 来年度予算編成の概算要求に関する8月の閣議決定では、保護予算の「合理化・効率化に最大限取り組み、極力圧縮に努める」と明記。財務省は10月、医療費の一部自己負担導入の検討を求めた。

▼政府は政策責任果たせ

 こうした動きに日弁連は危機感を強めており、11月6日には都内で保護基準の引き下げについて考えるシンポジウムを開いた。貧困問題対策本部の猪俣正事務局長は「日本の生活保護の捕捉率はわずか2~3割。(制度を利用していない)基準以下の人がたくさんいるなか、保護基準の方が高くなるのは当然だ」と苦言。「基準の引き下げは、貧困に苦しむ人を一層窮地に追い込み、餓死や孤立死が増える」と警鐘を鳴らした。

 保護利用者の多くは高齢者や傷病者。「働ける」とされる年代についても、失業や低賃金雇用で生活保護に頼らざるを得ないのが実態だ。大阪市立大の木下秀雄教授(社会保障法)は「保護受給者が増えているのは年金や医療、雇用が充実していないからだ。そうしたところに手当てをせずに政府が基準を引き下げるのは無責任だ」と批判した。

 生活保護制度をめぐっては07年11月、舛添要一厚労大臣(当時)が基準引き下げを明言したが、日弁連や当時野党だった民主党が反対して、断念させた経緯がある。今回は、日弁連は各地方弁護士会に引き下げ反対の声明を呼びかけ、12月に市民大集会を開く。学者や弁護士の有志でつくる「STOP!生活保護基準引き下げ」アクションも署名活動を展開中だ。猪俣事務局長は「年末にかけてが正念場だ。幅広い連携でストップさせる」と話している。

11月28日に電話相談生活保護問題で日弁連

 日本弁護士連合会(日弁連)などは11月28日、生活に困っている人からの電話相談に応じる全国一斉の「生活保護ホットライン」を行う。相談は無料。

 生活保護をめぐり今年5月、タレントの母親が生活保護を利用していたことを発端にバッシング報道が相次いだ。そうしたなか、経済的に厳しくても生活保護の利用を断念したり、保護利用者が不安を抱えたまま生活を送ったりしている恐れがある。このため、日弁連は各種制度の内容や法的支援についてアドバイスし、悩みに応える。

 相談の集計結果は、12月4日に都内で開かれる「STOP!生活保護切り下げ、市民大集会」で発表する。政府内で保護基準引き下げの動きが強まっており、実態を明らかにして見直しを求める考えだ。
 電話は、0120(158)794。時間は午前10時から午後10時まで。

                                        

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