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2012年 9月 4日

国民情報を一括管理 
国民のためなのか考え直そう

「マイナンバー法案」成立先送りで 

 参院本会議の首相問責決議案可決で、9月8日の会期末を残して国会審議が止まり、「マイナンバー(共通番号制度)法案」の今国会成立の可能性はほぼなくなりました。この機に、制度が本当に必要なのかを改めて真剣に学ぶべきです。

▼社会保障でなく人権侵害

 マイナンバー法案は、政府が国民全員に番号が記された「ICチップ付きカード」を与え、個人情報を一括管理する制度を2015年から始める内容。政府は「税や社会保障の情報をまとめて管理すれば、負担の公平性や手続きの利便性が高まる」としています。

 しかし、法案の第1条には、導入目的を「行政機関が番号機能を活用し、情報管理や利用を行う」とするだけで、税や社会保障の文言は見当たりません。17条では、検察や警察が「刑事事件の捜査」とすれば、政府も個人情報の提供を拒めないと定めています。こうした記述を見れば、マイナンバーは社会保障向上などよりも、国民の知る権利やプライバシーを侵害する特徴が色濃く出ています。

 そもそも、税務や社会保障に貢献するのかも確かめた方がよさそうです。政府は「これがあれば、消費増税対策として行う給付付き税額控除の対象者をつかめる」といいますが、同じ制度がある米国では今も所得の申告漏れが続出。負担の公平性どころか所得の把握すらできていません。

 保険医協会などの医療現場からは「社会保障個人会計の導入につながる」との懸念も聞かれます。個人会計とは、支払った保険料の範囲でしか国は負担せず、上回った場合は子どもらへの遺産から差し引く仕組み。マイナンバーを使うと、一人一人の支払額がわかるので導入しやすいわけです。これは、社会保障の抑制にほかなりません。

▼「政府の受け売り」に注意

 マイナンバーが導入されれば、データ管理などに約5000億円の予算が使われ、運用コストも年350億円に上ります。反対する市民団体からは「導入する背景にはIT利権がある」との指摘も出ており、財政難とされる折に多額の税金を使う是非も考えなくてはならないでしょう。

 なお、朝日新聞は8月28日付社説で、給付付き税額控除を行うために「マイナンバーが不可欠」と論じています。大新聞は、前述した多くの問題を示さずに政府の受け売りをして、国会審議が不十分なまま法案が通りそうになった原因をつくったといえそうです。
                                                 

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