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「社会保障の充実」消えうせる |
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国民管理の懸念広がる |
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政府が2月に国会提出した「マイナンバー(国民共通番号制)」法案に対し、市民の間に危機感が広がり始めている。3月6日に市民団体が開いた緊急院内集会では「社会保障に名を借りた国民管理だ」と批判が相次いだ。 ▼目的のすり替え マイナンバーとは「行政手続における特定の個人を識別するための番号」で、政府が国民一人一人にICチップ付きカードを手渡す形で番号を振る制度だ。政府は2015年1月開始を視野に、制度やシステム構築に関する3法案を今国会に提出している。 政府は「社会保障の利用状況や税金の情報を同じ番号にまとめれば、給付や還付を簡素化できる」と説明。消費増税を柱とする「税と社会保障の一体改革」に伴う低所得者対策にも必要と強調してきた。 ▼犯罪捜査にも利用 しかし、法案の中身はこれまでの説明を覆すものだ。 導入の目的を定めた「マイナンバー」法案の第1条には「行政機関が番号の機能を活用して、効率的な情報管理や利用を行うことができるようにする」と記された一方で、社会保障の文言は見当たらない。 昨年6月の政府大綱では、番号に盛り込まれる個人情報の範囲を「年金、医療、介護保険、福祉、労働保険、税務」としていたが、法案の別表に示された93事務のなかには「公営住宅の管理」や「雇用対策法による再就職援助計画の認定」などが加えられた。奨学金である「日本学生支援機構による学資貸与」も対象だ。 第17条では「何人」も個人情報提供を拒めない13項目も並べられた。訴訟手続きや刑事事件の捜査が含まれるほか、「その他政令で定める公益上の必要があるとき」とする曖昧な記述も。警察が「捜査」を名目にしたり、政府が「必要」として政令を出せば、何でもアリになりかねない。 ▼「国に知る権利与える」 6日の院内集会では、有識者たちが法案成立を阻止すべき理由を語った。 ジャーナリストの斎藤貴男さんは「望んでもいないのに、私の背番号を意味するマイナンバーと名付けた。国民をバカにしている」と政府を痛烈に批判。憲法学の清水雅彦日体大准教授は、政府が別途法案化を検討中の秘密保全法と合わせて、「国家に知る権利を与えて国民のプライバシーを侵害するもの」と論じた。 ▼韓国では自殺も 税理士の辻村祥造さんは「企業は源泉徴収などの税務に社員の番号を使うが、倒産すれば番号が漏れる」と懸念。集会を主催した「反住基ネット連絡会」の白石孝さんは、すでに番号制を取り入れた韓国では、1億件を超える番号漏えいが起き、それを悪用されて奨学金を盗まれた女子学生が自殺した例を挙げた。 水永誠二弁護士は、政府が漏えいを防ぐために設けるという第三者委員会を問題視。「たった7人で、うち非常勤が3人。どうやって防ぐのか」と指摘した。 ▼このままでは成立も 政府与党は法案を「予算関連」として成立をめざしている。反対しているのは共産、社民のみ。院内集会に参加した国会議員も秘書を含めて7人と関心も低く、短時間の審議で成立する展開もあり得る。「ネット連絡会」は3月に全国3カ所で集会を開き、反対世論を高めようと懸命だ。 |
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