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2012年 1月20日

「日本では、製造業はもうあかん」のか?
 ものづくりを考える

ある零細企業の廃業 

 昨年末、東海地方のある零細工場が廃業しました。30年以上にわたって、電機部品などの製造に関わってきましたが、数千万円の借金を抱えてついに立ち行かなくなったのです。

▼製造業はあかん?

 47歳の社長と77歳の母親で切り盛りしてきた、典型的な家族経営。それでも、1990年代前半までは十数人のパート労働者もいて、活気がありました。

 それが、90年代後半からは発注が減り、単価も下げられて、売り上げが激減していたのです。大手メーカーが部品製造を他県や海外に移したこと、外に出していた仕事を内製化したことなどが影響しました。

 「昔やったら、安い単価を押し付けてきても、次にはいい仕事を出してもらってた。親会社ともいい関係があったのに、もうそんなもんはなくなった」

 母親はこう語ります。
 そして一言。
 「日本では、製造業はもうあかん」

▼生活保護しかない

 現在、工場も自宅も売りに出し、自己破産の手続きを進めています。
 母親は、生命保険や預貯金をほとんど取り崩してきたため、収入は月5万円強の国民年金だけ。これではとても生活できず、生活保護を申請する予定です。

 以前から「生活保護受けるくらいやったら、死んだ方がマシ!」と言い張っていました。田舎ではまだまだ生活保護に対する周囲の理解があるとは言えません。それでも、生きていくためには他に選択肢はありませんでした。

 息子の方は、寮付きの製造業務派遣へ。通える範囲にメーカーの工場は結構あるのですが、直接雇用の仕事は見つからず。派遣が当たり前のように広がっているのです。

▼理不尽な仕打ちも

 日本のものづくりは、こうした零細企業が支えてきました。

 作業をスピードアップできる道具を独自に製作したところ、親会社が「すごいですねえ」と借りていきました。その後、仕事を切られました。調べたら、道具を量産して、他の下請け工場に振っていたとか。

 時には、こんな理不尽な仕打ちにも遭いながら、納期と品質にはこだわりをもって働いてきたのです。睡眠不足による半身まひや交通事故もありました。

 そして気がついたら、借金の山。財産も無くしました。経営能力に問題がなかったとは言いません。弱肉強食の流れについて行けない甘さがあったのも事実でしょう。

▼消費税で命取りに

 しかし、今政府が計画している消費税率引き上げは厳しい零細企業にとどめを刺すものです。経営者の能力の問題ではありません。 

 日本のものづくりを底辺で支え、地域経済にもそれなりに貢献してきた中小・零細企業に対し、この国の政治はあまりにも冷たいと思います。

 赤字であっても、借金が積み重なっていても、売り上げがある限り消費税はかかります。今の5%でも零細企業にとっては命取りになりかねません。それが8%や10%になるとすれば、倒産・廃業が多発するのは確実でしょう。

 日本は本当にものづくりを大事にして生きていくつもりなのか――。年の瀬のつらい現実を前に、改めて考えてみたいテーマです。


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