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2012年 5月 7日

インフラ未整備で再開困難 
頭抱える中小労使/〈南相馬を再び訪ねて〉(4)

「地元企業への支援優先こそ」 

 福島県南相馬市では立ち入りを禁じる警戒区域が4月16日に解除され、企業が操業できるようになった。だが、水道や電気などのインフラは未整備で、再開への道のりは険しい。中堅・中小の産別労組からは「県や国は企業誘致に力を入れるだけではなく、今ある地元企業への支援を優先して」という声も聞こえる。

▼企業努力の限界超える

 警戒区域だった旧小高町は、大半の地域に立ち入れるようになったが、依然として住むことはできない。破壊された社会インフラの多くが震災当時のままだという。

 同地域では企業の撤退が続く。大日本印刷と藤倉ゴム工業は4月、現地工場の閉鎖を決定。セイコーエプソン子会社も昨秋、工場を閉めている。

 そんななか、ある油圧シリンダーメーカーは、予定していた6月の再開が難しくなっている。上下水道の応急の復旧措置が「今年12月まで」とめどがつかないためだ。

 さらに、人材不足の不安が影を落とす。昨年、この会社の労組(JAM加盟)組合員に行ったアンケートでは、9割以上が「戻りたい」と答えていた。しかし、JAM南東北の大竹初夫書記長は「組合員は皆、各地に散らばっている。子どもがいる人は避難先に置いて来なければならず、実際は難しいだろう」とみる。

 住宅不足も従業員の復帰を阻む要因の一つ。市内の民間アパートは被災者のための借り上げで占められ、入居は容易ではない。

 国や会社に求めたいことを聞くと、「言っても仕方ないが、放射線量を下げてほしい。一番はこれでしょう。危険手当の支給も考えられるが、本来的に会社が負担すべきものでもないし、そうかといって東電に要求して支払ってもらえるとも考えにくい」。企業努力の限界をはるかに超えた難題に労使が頭を抱える。

▼被災企業の実情把握を

 4月20日、県の復興特区申請が国に認定された。県内工業団地に新規に進出する企業に5年間、法人税減免などを行う内容だ。

 大竹書記長は「県も国も新たな企業誘致に力を入れているが、それだけでいいのか。地元企業の再建支援を一番に進めてほしい」と苦言を呈す。

 また、被災自治体では、放射線量が比較的低い県南部のいわき市内に「仮の町」をつくる構想が浮上するなど百家争鳴の様相も見受けられる。

 同書記長は「本当に再開できるかどうか、行政は避難区域内の企業に聴き取りを行うべき。今は企業がそれぞれでインフラの状況などを行政に確認し、改善を求めている状況。まずは行政が率先して全体像をつかみ、実情に即した復興計画を打ち立ててほしい」と語っている。

〈用語解説〉
 警戒区域 緊急事態への対応に携わる者を除き、立ち入りが禁止される地域。居住者などの生命や身体への危険防止が目的とされています。昨年4月、福島第一原発から半径20キロ圏内が指定されました。道路は封鎖され、違反者には10万円以下の罰金か拘留が科せられます。

 今年4月1日には川内村と田村市の警戒区域が解除となり、南相馬市は人口が多いことなどから、少し遅れて4月16日に解除されました。            


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