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2012年 6月28日

国分寺市で公契約条例制定 
公共調達全般を視野に

官製ワーキングプア解消へ一歩  

 東京都国分寺市で6月25日、工事や委託、指定管理業務など、市の業務を運営するために必要な歳出を行う「公共調達」のあり方について、市や受注企業の義務を明示し、そこで働く労働者の賃金の下限を定める条例が全会一致で成立した。公契約条例としては全国6例目。良質な公共サービス実現や、「官製ワーキングプア」解消への一歩として期待される。施行は公布後6カ月以内。

▼賃金センサスを活用

 同市では2006年、ゴミ収集を受託していた企業が突然契約を解除したトラブルを契機に、安さだけを競い合う入札制度の見直しを開始。入札に関する指針策定を経て、昨年12月に条例案を提出した。

 条例の対象は工事や委託業務だけでなく、物品購入や指定管理業務など幅広い。受注企業に対しては、法令順守をはじめ、環境や障害者雇用、男女雇用機会均等など地域社会への貢献を意味する「社会的価値」の向上に努めるよう求めている。市に対しては、品質維持のために通常必要とされる積算価格を著しく低下させてはならないことなどを定めた。

 そのうえで、「賃金の下限」の適用は、公共工事が予定価格の9000万円以上、その他の契約が同1000万円以上で、いずれも「規則で定めるもの」とした。過去の実績でみると少なめの滑り出しとなる。

 工事を除く「賃金の下限」を「標準的な賃金」としたのも特徴。業種や年齢、企業規模別の賃金実態を示す厚生労働省の「賃金センサス」を活用する考えだ。生活保護基準など一律の水準としなかったのは、業種ごとの実情を反映させるためだという。具体的水準は新設する「公共調達委員会」で検討する。

 下請けの条例違反に対しては受注企業に連帯責任を負わせるとともに、働く人が違反を通報する「公益通報制度」の周知を受注企業に義務付け、違反を防ぐ。

〈解説〉物品購入も対象に

 国分寺市の公共調達条例は、他の自治体の同種の条例では対象外とされている「物品購入」や、NPOなど「新たな公共」の担い手までを対象に含め、「公共調達」全般を幅広く律することとした。処遇改善への新たな仕組みとして期待されるものがいくつかある。一方、課題も残した。

 物品購入を対象とすることは、印刷や製本など、低価格競争で苦しむ業界にとって、実現が待たれていたところである。条例制定後すぐには「賃金の下限」規制の対象とはならないにしても、その枠組みをつくった意義は大きい。

 工事を除く業務で、「賃金の下限」を決める際、業種ごとに賃金の平均値を示した厚労省統計の活用を検討していることも初の試み。水準の設定の仕方次第では、自治体臨時・非常勤職員の著しく低い賃金の改善につながると期待される。臨時・非常勤職員の賃金は当然、条例の対象外だが、委託先に順守を求める賃金水準を自治体自身が守らなくていいという道理はないからだ。

 一方、労組側が残念がるのは、自社が落札できず職場を失う労働者の雇用確保措置が、努力義務にさえならなかったこと。先行する多摩市では既に導入済みの規定だ。

 「賃金の下限」を検討する「公共調達委員会」の委員5人の割り当てで、有識者3人、労使各1人の案が検討されていることも懸念材料の一つ。工事と委託という、仕事の性質も、受け皿となる代表的労組も異なる2つの業務を、1人の労働者委員で代表できるのかとの声が聞こえる。

 今後の具体化作業で、当事者の意見を十分に踏まえたものとなるよう、推移を見守りたい。
                                                              

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