京都府職員労働組合 -自治労連-  Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2012年 11月 1日

再稼働できない事実を逆証明 
〈迷走する原発事故予測マップ〉

規制委が立てた皮肉な「功績」

 原子力規制委員会が10月24日に発表した重大事故予測マップの精度が疑われている。原発がメルトダウン(炉心溶融)を起こした際の放射性物質拡散をシミュレーションしたのだが、東海第二や柏崎刈羽など6原発で気象データの入力を間違えたために、拡散の方角がずれていた。

▼電力会社がミス指摘

 規制委は29日にミスを認めて修正した。規制される側の電力会社の指摘でミスが発覚したという不始末に、事務方の森本英香・規制庁次長は「緊張感を持った仕事ができなかった」と平謝りだった。

 規制委が予測マップを明らかにしたのは、再稼働を見据えていたからとみられる。マップで避難の国際基準とされる「1週間の被ばく線量が100ミリシーベルト」の地点を示して、該当する自治体の防災計画完成を促しながら、自らも来年7月に新たな基準を策定して「安全」な原発を動かそうというもくろみだ。

▼間違いだらけでも…

 しかし、規制委の思惑はどうであれ、マップは再稼働が不可能であると証明してしまっている。

 まず、マップには各原発を取り巻く地形がまったく考慮されていない。風向きや風速も一定という仮定で計算しているため、実際の事故とは拡散状況が異なる可能性が高い。福島第一事故で全村避難に追い込まれた飯舘村の汚染が事前に想定できなかったという教訓を生かしていないのだ。

 間違いだらけで防災に役立ちそうもないマップだが、正しい「指摘」もしている。重大事故が起きれば四方八方に放射性物質がばらまかれ、住民の生活を根こそぎ奪うことだ。日本がもっとも起こしてはならないフクシマの二の舞いである。

▼丸投げと対策不能

 マップの公表をめぐっては、一方的に出されたことで各自治体は戸惑い、さらに修正とあって非難ごうごうだ。それはいみじくも国が防災対策を丸投げし、自治体側も検討や準備を進められないという現実を浮かび上がらせている。

 規制委の田中俊一委員長は「原発から30キロ圏内は防災計画が必要」と言うが、前出の東海第二に当てはめると人口は93万人。政令指定都市並みの人数をスムーズに避難させるなどは無理だろう。県庁が10キロ圏内にある島根県では、防災を担う県庁や警察などの移転という超難問に突き当たっている。

▼コスト莫大ナンセンス

 防災対策といえば、事故時の指揮拠点となるオフサイトセンターを軒並み30キロ圏外に建て直さなければならない。全住民へのヨウ素剤配布も不可欠だ。原子炉そのものに、放射性物質漏えいを抑えるベントフィルターや津波襲来を避ける防波堤も完備する必要がある。

 これらをすべて含めて考えると、防災に使うコストは莫大にかかるだろう。政府や自治体の財政難が叫ばれるなか、それだけ巨額を費やすこと自体がナンセンスだ。仮に予算をつくれたにしても、絶対安全はつくり上げられないのは、もはや論を待たない。  

                                        

府職労ニュースインデックスへ