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2012年 8月28日

原子力は本当に経済的か? 
脱原発・原発ゼロを考える(下)

経済性の「論拠」も崩れる  

 「福島の事故を考えると原発はなくしてほしいけど、経済にマイナスが出そうなのが心配で…」

 原発の問題を話し合うと、このような議論が必ずといっていいほど出てくるだろう。原発推進の立場を取る経済界なども「電気料金上昇→産業空洞化→経済衰退」という図式を盛んにアピールする。

 この論法を使っているのは、新たなエネルギー政策を決める政府も同じだ。2030年の原発比率「ゼロ」「15%」「20~25%」のシナリオごとに示した経済試算では、「ゼロ」の発電コストや電気料金が最も高くなるとしている。

 ところが、エネルギー政策を提言している「自然エネルギー財団」が、政府と同じ手法で試算をやり直したところ、「ゼロ」の発電コストは1キロワット時当たり2円近くも下がった。電気料金も各シナリオの間で差がほとんど生じない結果になった。

 財団では「政府試算は、福島第一原発事故の損害額を6・8兆円とみなして『原子力の発電コストが安い』としているが、除染や放射性廃棄物処分場の費用などを含めれば20~75兆円に膨らむはず」と指摘。「そもそも試算には、再生可能エネルギーの普及に伴うコストダウンや発送電分離などの電力市場改革による効率化も算定根拠に含まれていない。こうした前提で経済性を比較すること自体に限界があるのでは」と疑問を投げかけている。

▼最後の牙城も崩れる

 安全神話が崩れたうえに、福島の事故も収束が進まないなか、原発を推進する人たちにとって「経済性」は唯一のよりどころだった。しかし、くだんの試算を見る限り、その牙城も崩れているといっても言い過ぎではない。

 8月22日に野田首相と面会した首都圏反原発連合の一人は、冷静さを保とうとしていた首相の眉がピクッと反応した瞬間を見逃さなかった。それは、関西電力大飯原発の再稼働の正当性を主張したのに対し、反原発連合側から「電力会社の帳簿の問題だったのでは」と反論されたときだったという。
                                                  

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