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2012年 3月15日

「国内ルールがズタズタになる」
東大大学院の鈴木宣弘教授

TPP参加の危険性を力説 

 TPP(環太平洋経済連携協定)反対の急先鋒の一人、東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏が3月12日、連合通信社の情報懇話会で講演した。テーマは「TPP推進論を切る」。政府の対応と主張を厳しく批判しつつ、「TPP参加にストップをかけるため、皆さんも覚悟を決めて運動してほしい」と呼びかけた。

▼安全や環境も犠牲に

 TPPに入るとどうなるかについて、鈴木教授はこう語った。

 「農産物などの関税ゼロに例外は設けられない。第一次産業がつぶれ、加工や輸送などの関連産業もダメになり、地域コミュニティーは崩壊する」

 「健康保険や郵政、遺伝子組み換え表示をはじめとする国内ルールが、米国によってズタズタにされる。安全や環境、平等にかかわるルールが無事では済まなくなるのだ。米国はNAFTA(北米自由貿易協定)でカナダやメキシコをいじめたように、ISD条項を乱用するだろう」

 ISD条項は、「政府の政策で不利益を被った」として、外国の投資家などが相手国政府を訴えることができると定めるものだ。

▼お粗末な日本政府

 政府は「とりあえず中に入って交渉する」と説明しているが、鈴木教授は「そんなことができないのは、政府も分かっているはず。ルールは交渉参加の9カ国が決める。日本はそれに従うだけ」と断言した。 

 仮に参加した場合、日本のメリットは年2700億円程度という政府の試算を挙げて、「それより日中、日中韓、さらにASEANとの貿易の方がはるかに大きい。アジアの分断を図りたい米国に尻尾を振っている日本は、世界でバカにされている」と嘆いた。

▼連合に苦言

 国内では44の県議会と8割以上の市町村議会がTPP参加に反対している。国会議員の半数以上も反対・慎重とのスタンスである。 
 こういう世論状況の中で参加に向けて突き進むのは「民主主義国家とは言えない」と指摘。日本の民主主義が問われているとしたうえで、「この問題は、一生懸命やったけどダメでしたでは済まない。皆さんも覚悟を決めて運動してほしい」と呼びかけた。
 連合のスタンスについては「どうしてTPP反対と言ってくれないのか。連合が反対すれば大きな影響があるはず」と述べた。

〈メモ〉日本はカヤの外

 昨年11月にハワイで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の場で、野田首相がTPPに参加したいと表明。それから、交渉参加の9カ国と話し合いが行われ、現在は米国、オーストラリア、ニュージーランドと個別に事前協議を進めている段階です。 

 ポイントになるのが米国との事前協議。3―6月がヤマ場になると見られています。
 一方で9カ国は着々と協定内容の議論を行っています。3月にはオーストラリアで第11回会合を開催しました。協定内容の合意に向けて作業が進んでいるのです。これから日本が要求を通すのは常識的には無理。「日本は9カ国の合意内容を押し付けられるだけ」(鈴木宣弘教授)という指摘は、時間の関係からみてもその通りでしょう。


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