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2012年 5月31日

「原発は不良債権だ」 
〈5・26さようなら原発講演会から〉(2)

慶応大学教授 金子勝氏 

 関西ではこの夏、電力は不足しない。企業は自家発電施設を増設していて、これを使えば、政府が示した電力供給量よりも1000万kW(キロワット)程度上積みがあるだろう。

 むしろ問題は「原発が止まると、火力発電に使う石油の燃料コストがかさんで電気代が上がる」などとする電力業界のデマキャンペーンだ。だまされてはいけない。原発は不良債権であり、金食い虫だ。

 11年第3四半期の電力各社の決算を見ると、黒字なのは沖縄電力、電源開発、中国電力で、原発を持っていないか依存度の低い会社だ。むしろ逆に赤字を多く出しているのは、原発をたくさん持っている東京電力や関西電、九州電だ。

 よく原発の発電コストは1kW時当たり5円で、石油などの火力よりも安いなどといわれるが、本当の話ではなくコスト計算の基準がそうなっているだけ。原発は止まっていても燃料を冷やさなければならないので、余計に損失が発生し、依存している会社は赤字体質になる。このままでは関電や九電は自己資本が底を尽くから、必死に再稼働しようとしているのだ。

 こうした状況は「失われた20年」をもたらした1990年代の銀行の不良債権処理と似ている。銀行と財務省はルールなき基準で債権額をごまかし、どの銀行が危ないのかを分からなくさせた。今回の原発でも、政府は電力会社とともに原発の安全性が担保できないまま再稼働させようとしている。信用管理ができない政府はパニックを招くだけだ。

▼「東電解体が日本変える」

 東電は、家庭向けに販売された電力量が全体の38%に過ぎないのに、家庭向けが利益の91%を占めていることが分かった。実は家庭向け料金はこの半年で600~1000円ほど上がっているが、企業向け販売の自由化による競争で値上げできないしわ寄せが来ているのだ。

 これからの日本を変えるには、東電の解体が絶対欠かせない。(5月9日に国が認可した)再建計画は、除染や賠償の費用ばかりか原発の廃炉コストも計上されていない。福島県民を無視しており、リストラに取り組んだというのもウソだ。

 解体に向けてすべきは、賠償責任の追及、福島県民を救うための賠償方式に変えること、発送電分離の3点。1兆円も投じて動かない「もんじゅ」や3兆円以上費やした六ヶ所再処理工場などに、税金を無題遣いしていいのか。原子力予算を組み替えていこう。

 出発点は「福島県民をいかに救うか」であり、そのうえに脱原発やエネルギー政策の転換があることを忘れないでほしい。原発にこだわってゾンビ企業(東電)を救うのか。再生可能エネルギーや省エネ技術による産業を興して、それに基づく耐久消費財を製造し、雇用を生み出して経済を活発にするのか。後ずさりすれば、日本は「失われた30年」に陥って滅びるだろう。(連合通信)    


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