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2012年 4月5日

閣僚会合で「政治判断」はできない 
大飯原発の再稼働問題

矛盾点あまりに多く 

 野田首相は4月3日、枝野幸男経済産業相、細野豪志原発担当相、藤村修官房長官の3閣僚と関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働の是非を初めて協議した。「政治判断」は先送りしたが、5月5日に迎える原発全停止を避けようと会合を集中的に開く構えだ。

 だが、首相が再稼働に執着すれば無理を重ねるしかない。根拠が乏しいのだ。

▼ずさんなストレステスト

 政府が再稼働の条件としたストレステストは、主に既存施設の耐久性をコンピューターで見る1次評価だけが先行。重大事故対策を見極める2次評価は今も示されていないが、経産省の原子力安全・保安院は「福島第一のような事故は起きない」と意見聴取会を強引に打ち切った。

 確認をした原子力安全委員会も「具体的説明がなく納得できない」(久住静代委員)のに了承。結論を出す会議を5分弱で終えた。

▼「原子力ムラ」なお健在

 1次評価の審査では「原子力ムラ」の癒着が根強いことも明らかになった。

 保安院は安全委の検討会で大飯3、4号機の制御棒の挿入時間とされる「2・16秒」を、正式な確認もなく「1・88秒」に引き下げて報告。関西電が「活断層の連動地震が起こる」との指摘に備えて出してきたとみられる数字を、言われるがまま使ったのだ。

 首相は、閣僚会合で保安院に再稼働の新基準を出すよう指示したが、本来は4月に発足するはずだった原子力規制庁の役割だろう。
 新基準は、保安院が3月にまとめた30項目の安全対策をかみ砕いたものになりそうだ。項目には水素爆発を防ぐ設備増強などが盛り込まれ、純粋に当てはめると、国内原発のほとんどが基準以下となる。再稼働を決めれば、矛盾に陥るのは目に見えている。

▼本当に電力不足か

 「夏場の電力不足」の信ぴょう性も怪しい。

 政府のエネルギー・環境会議は「原発全停止で2010年のような猛暑が来れば、関西電管内の電力はピーク需要時に対して19・3%不足」とする。だが、この試算は火力発電の定期検査を8月に設定し、再生可能エネルギーをゼロにするなど、供給をわざと低くした可能性が高い。

 枝野経産相は電力各社に改めて正確な供給見通しを求め、外部にもチェックさせる考えだ。政府が試算の誤りを認めたのと同じである。経団連など財界は「再稼働がないと電気料金が値上がりして産業は空洞化する」と主張するが、全国の中小企業でつくる「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」は3月の設立趣意書でこう反論している。

 「電気料金が10%上がっても、製造業の総コストに与える影響は0・1~0・3%。そのレベルで工場を海外に引っ越すのか」

 環境エネルギー政策研究所の飯田哲也代表も「関西は最悪の場合でも計画停電を覚悟すれば、再稼働のロジックは成り立たない」と語る。少なくとも、政府自らが4月末から5月上旬にも示す新たな需給見通しを検証する必要があるだろう。

▼地元の範囲も広がる

 政府は、再稼働の同意や理解を得る地元として、福井県とおおい町を想定してきたが、通じそうにない。大飯原発から30キロ圏の京都府と滋賀県の両知事が反対しており、関西電の大株主で最大の電力消費地である大阪市も「100キロ以内の自治体との安全協定締結」など、再稼働へ8条件を突き付けたからだ。

 福島事故では、30キロ以遠でも高い放射線量が観測されており、両知事らの意見は真っ当。福井県の了を得るだけでは「地元軽視」のそしりは免れない。

▼経産相も「反対」明言

 枝野大臣は2日の国会答弁で「現時点で私も再稼働に反対」と明言。翌日の記者会見でトーンダウンしたとはいえ、原子力推進の経産省トップが国会で反対を口にした意味は大きい。

 閣僚会議について枝野氏は「4人の意見が一致するまでやる」とした。首相も「国民視線から安全が確保されているか判断したい」と述べており、その通りならば再稼働ありきの結論はおのずと出てこない。                     


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