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企業の故意犯罪で禁固16年 |
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欧州通信員 欧野 雅知 |
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横浜地裁が5月25日、「建設アスベスト訴訟」の訴えを棄却するなど、日本では、国と企業の責任を認めない不当な判決が大きな社会的・政治的問題になっている。一方、イタリアでは、アスベストをめぐる刑事裁判で、「企業管理者の故意犯罪」概念が初めて職業上の疾患に適用され、元経営者2人への禁錮16年の実刑を含む厳罰判決が下され、国内外に反響が広がっている。 ▼企業責任者の犯意認定 イタリアのトリノ地裁は2月13日、環境破壊と労働安全義務違反の罪に問われたスイスの建材製造会社エタニット(ETERNIT)のスイス人とベルギー人の元経営者2人にそれぞれ禁錮16年(求刑禁錮20年)、総額約9500万ユーロの賠償などを言い渡した。 同社は1907年にイタリア・ピエモンテ州カザーレ・モンフェッラートに欧州最大のアスベスト製造工場を開設し、その後、カヴァニョーロ、ルビエラ、バニョーリにも工場を建設。工場と周辺地域では、1950年代から現在に至るまで死者と患者が続出しており、カザーレ・モンフェッラート工場に関しては、働いていた従業員と住民1700人以上が、4工場全体に関しては約3000人がアスベスト被害で死亡している。 こうしたなか、国内4工場の元作業員、遺族、周辺自治体当局、住民、各種関係団体など5000人弱が100人以上の弁護士らを代理人に立てて検察当局に告訴し、2009年4月公判開始、70回の審理を経て今回の判決に至った。3大労組ナショナルセンターの各レベルの組織も告訴に加わった。 ▼世界の闘争に役立つ 判決は禁錮刑のほか総額約9500万ユーロ(うち補償金分8000万ユーロ。遺族数百人に対する平均3万ユーロなど)の賠償なども命じた。 判決(全713頁)は、判決理由のなかで、1962年にアスベスト(石綿)の発がん性を指摘する勧告がEUの欧州委員会から発せられ、アスベストが石綿沈着症や悪性中皮腫を引き起こすことが知られるに至っていたにもかかわらず、被告がイタリア国内の工場を閉鎖し終わったのは1986年であり、その間、工場と周辺地域における環境被害を引き起こし、かつ、労働者を保護する健康と安全の対策を取らなかったことを確認。エタニット社の「非常に強い」故意を認定した。 イタリアで企業の故意犯罪概念が職業上の疾患に適用されたのはこれが初めてであり、歴史的判決といわれる。今回の判決では、ルビエラとバニョーリの環境汚染補償は時効消滅と判断されたが、検察は、この両地域を含め殺人罪で、2度目の訴訟を起こすとしている。 スクディエーレ・イタリア労働総同盟(CGIL)全国書記は「歴史的裁判であり、模範的な判決」と高く評価した。エタニット社元労働者でカザーレ・モンフェッラートの闘いの責任者を務めたポンドラーノ氏は、「今回の判決は、全世界のアスベスト使用禁止闘争に寄与するものだ」と、その重要性を強調した。 イタリアでは、1970~80年代にアスベストにさらされた人々がその後発症し、犠牲者数がピークに達するのは、2015~18年といわれる。 エタニット社側は判決を不服として控訴した。闘いは、世界各地の取り組みと連帯しつつ、今後も続けられる。 (連合通信) |
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